TOP美術鑑賞 > 2025年

  美術鑑賞 

     2025年・令和7年


ブラックジャック展

鑑賞日:2025年 2月17日
会 場:そごう美術館

ブラックジャック展ブラックジャック展

エントランスからすぐに、「手塚治虫は古い」「虫プロ倒産」といったネガティブな言葉がクローズアップされ、驚きました。

手塚氏の長男、長女、担当編集者が当時の様子をビデオで語っていました。虫プロ倒産当時の家庭の状況や漫画の新しい流れ(新しい人気漫画家の誕生など)が語られ、手塚氏がどんどん追い詰められていく様がリアルに見えてきました。そんな逆境の中でブラックジャックは誕生したのです。

虫プロは倒産し、漫画家としての人気も低迷していた手塚治虫の「漫画家としての最後を看取る」という意味での新連載『ブラックジャック』は起死回生の大ヒットになりました。

少年漫画にはありえない、医者が主人公。当時としては珍しい一話読み切り。これら全てが斬新だったのでしょうが、一話一話を丁寧に紡ぎ出す手塚治虫の哲学が絶賛されたということでしょう。

ブラックジャック展ブラックジャック展ブラックジャック展

ブラックジャック展

会場には膨大な量の原画が展示され、読み進めるごとに天才外科医ブラックジャックの世界に引き込まれました。完璧ではないところも、時には世直しする姿も非常に魅力的です。

長女さんが「私に似ている」と語っていたピノコは一服の清涼剤。ダークな世界に咲く一輪の花のようです。(誕生は衝撃的ですが)

展示品の中に手塚氏の医師免許の複製がありました。こちらは2009年に江戸東京博物館で見た『手塚治虫展』の時に見たものと同じでしょうか?


TBS FASHION GALLERY 2025
ザ・ベストテン展

鑑賞日:2025年 3月13日
会 場:TBS赤坂BLITZ スタジオ ホワイエスペース

ザ・ベストテン展

久米宏さん、黒柳徹子さん司会で一世を風靡した生放送の歌番組『ザ・ベストテン』は1978年1月から1989年9月までTBSで放送されていました。

ここ最近の昭和歌謡ブームで再注目されているのでしょう。私と同年代の方ばかりでなく、お若い鑑賞者もちらほらいらっしゃいました。

非常に狭いホワイエスペースに懐かしいベストテンの世界がありました。展示物は非常に少なく、ビデオ上映もパネル展示も限られた歌手だけで正直見応えはありませんでしたが、私は沢田研二♥を見られただけで大満足でした。

ザ・ベストテン展

モニターには放送開始から終了までの12年のダイジェストが流れていました。1時間半から2時間くらいだったでしょうか。ジュリーは最初の年から1982年くらいまでの映像が流れていました。

肖像権などの問題があるのでしょう、番組の総出演者のほんの一部の歌手の映像だけ。百恵ちゃんやピンクレディ、連続1位記録の寺尾聰さんの映像もなし。物足りなさはあるものの、みなさん立ち止まって見入っていました。(フリを真似する人も!)

『ザ・ベストテン』が面白かったのは、ベストテンに入った歌手を追いかけて中継してまで歌ってもらうこと。そのドタバタにライブ感がありました。新幹線のホームで中山美穂さんが戸惑いながら歌っていました。

沢田研二を筆頭に、中森明菜、小泉今日子、本田美奈子、チェッカーズ… みなさん競うように華やかな衣装です。そしてセットも面白い。悪ノリして意味不明なセットもありました。昭和ですね。

黒柳徹子さんの協力があったようで、黒柳さんの衣装が数点展示されていました。黒柳さん、スリムな方だったんだなぁと、衣装のウエストを見てしみじみ思いました。

ザ・ベストテン展ザ・ベストテン展ザ・ベストテン展

ザ・ベストテン展ザ・ベストテン展

ジュリーのパネルには早川タケジさんの名前も上がっています。裏方である早川さんのお名前が上がっているのは非常に嬉しいです。当時のジュリーの個性を作り上げた主要スタッフの一人であり、なくてはならない人でした。

『ザ・ベストテン』はジュリーがテレビに出なくなるまでは毎週見ていました。大好きな番組でした。


漫画家生活60周年記念
青池保子展

鑑賞日:2025年 3月22日
会 場:弥生美術館

中学生の頃大好きだった漫画『エロイカより愛をこめて』。その作者、青池保子さんの展覧会がありました。鑑賞者は私よりもお姉様ばかり。グッズ売り場で少女に返ったかのようにはしゃぐ姿が可愛らしかった!

青池保子展青池保子展

作品は青池保子さんのデビュー作から順番に並びます。『イヴの息子たち』など作品のタイトルは知っているものの読んだ事がない作品ばかり。それでも作品の美しさに見惚れてしまいました。

青池保子展青池保子展

2階に上がると『エロイカより愛をこめて』の世界に入ります。懐かしい、懐かしい。大好きだった少佐や伯爵、ツェットやジェイムズくん、本当に懐かしい。そして美しい。(私は少佐、友人は伯爵&ツェット推しでした)

原稿ももちろんありますが、カラー原画が素晴らしい! 保存状態が非常に良くて時間の経過を感じさせません。キラキラしています。当時これらの原画のほぼ全てを掲載したイラスト集を持っていて、よく眺めていたことを思い出しました。(今はありません。涙)

ブラックジャックとコラボしたコミックの展示もありました。秋田書店だから実現したのですね。

あらためてカラー原画を見ると、ヨーロッパのアートや文化が色濃く反映されていて、青池保子さんの知識の深さに驚かされます。

中学生だった当時、この作品で、NATO や K.G.B 、C.I.A 、ローマ法王などを知りました。

・・・・・・・・・・

青池保子展青池保子展

青池保子展

美術館の敷地内にある夢二カフェ港やではコラボメニューがありました。少佐の芋ケーキ(カルトフェルトルテ)です!

コックコート姿の少佐に目が止まり迷わず入店しましたが、すでに本日分は完売していました。毎日数量限定のようです。

ケーキは終わったけどカプチーノならあるとのことだったので、少佐のいのししカプチーノを注文。おまけにオリジナルのコースターをいただきました! これは嬉しい。

本展は6月1日まで開催しているので、芋ケーキを食べるチャンスはまだあります。少佐に「フン」と言われそうですが。


とみこはん個展 Freely

鑑賞日:2025年 4月 3日
会 場:文房堂 ギャラリーカフェ

とみこはん個展

神保町の文具店 文房堂の3階のカフェの壁を利用したギャラリーでとみこはんの個展が開催されていました。

消しゴムはんこを使った作品ですが、昭和の時代の消しゴムハンコではありません。アートです。

作品は美味しそうな食べ物ばかり。でも美味しそうなだけでなく、その佇まいがとてもかわいらしいです。

とみこはん個展 とみこはん個展 とみこはん個展

「おにぎり山」や「Chips」も素敵でした! グッズ展開もあります! 4月14日で開催しています。


にしむらゆうじのひみつ展

鑑賞日:2025年 4月 3日
会 場:松屋銀座8階イベントスクエア

Lineスタンプで知った にしむらゆうじさん。お馴染みの動物たちが愛嬌を振りまいていました。

にしむらゆうじのひみつ展

2015年に初めてLineスタンプを作り、今年で活動10周年ということです。10年でこれほどたくさんの人の心を掴むというのはすごいことです。

にしむらさんのキャラクターは表情が非常に豊か。生きているかのよう。動物たちが会場内を動き回っているように感じました。(動物たちが生き生きとしている姿を見て、鳥獣戯画を思い出しました)

そしてキャラクターたちは皆とても柔らかそう。可愛らしさ倍増です。

ゆる〜いオチのついた漫画が微笑ましい! その漫画によると、にしむらさんと動物たちは共同生活を送っているようでした。
にしむらさんと動物たちのLineの会話もありました。さして重要でもない会話が(失礼!)エンドレスで続いていました。

壁の隙間に書き込みが数点ありました。西村さん自身が壁に書き込んだものだと思います。

にしむらゆうじのひみつ展にしむらゆうじのひみつ展にしむらゆうじのひみつ展

にしむらゆうじのひみつ展にしむらゆうじのひみつ展


金子國義・四谷シモン「1967年、ある日」展

鑑賞日:2025年 4月27日
会 場:ギャラリー LIBRAIRIE6

展

画家 金子國義と人形作家 四谷シモンの展覧会。恵比寿にあるギャラリーに印象的な作品が並んでいました。

金子國義さんが生み出す、眉が太く細身の女の子たちはとてもキュート。媚びないツンとした顔が魅力です。若い女の子でも品があります。この子達は他に変わるものがありません。アリスシリーズも素敵です。

シモンさんの人形は4体ありました。

今回非常に驚いたのが可愛らしい女の子の人形。階段にちょこんと座るその子は、25年前に見た恐ろしいほどに目に力がある人形たちとは一線を画し、微笑みを讃え、青い目に一点の曇りもない少女でした。ピンクのリボンも可愛らしいそのお顔を、じっくりと拝見させていただきました。シモンさんが製作する人形のイメージが変わりました。

展

他にも、胸像のようなものや、シモンさんによるパステル画も数点ありました。

金子さんとシモンさんはセツ・モードセミナーで出会ったそうです。(やっぱ、セツ・モードセミナーってすごいところだなぁ)

出会った時やその後の交流など、シモンさんが短かな手記を寄せていました。

パーティフォトもあり、コシノジュンコさんのお顔も見られました。(お仲間ですもんね)

グッズにトートバックがあったのですが、この少女のバックはなかったのが残念。

本展は5月18日まで開催されています。シモンさんが在廊されることもあるようです。


火の鳥展

鑑賞日:2025年 5月20日
会 場:東京シティビュー

手塚治虫の大作『火の鳥』を、本展を企画された生物学者の福岡伸一さんが解説する展覧会でした。最後に何故か、横尾忠則さんとの対談がありました。

火の鳥展

本展の導入部分で、手塚治虫氏が影響を受けたというバレエ『火の鳥』やソビエトのアニメ『イワンと仔馬』の映像が流されていました。これは非常に興味深かった。鳥のように滑らかで美しいバレリーナと鳥の羽を腰に刺して踊るアニメの子供。どちらも大変美しいものでした。これは見られてよかったです!

バレエとアニメの映像を超えるとパネルや原画の展示が始まります。
連載順に原画が並んでいましたが、思ったよりも少ないと感じました。(『ブラックジャック展』のボリュームがありすぎた?)何故か膝下の低い展示スペースに原画が並べられているブースがあり、中腰で見下ろさなければならず、ちょっと見づらい。床も近未来を意識したかのような金属板を並べた箇所があり、人が歩くたびにガタガタうるさい。普通の展示でいいんだけどなぁ。

原画の他には我王と茜丸が作った鬼瓦の展示(!)がありました。

未完の大作と言われる『火の鳥』ですが、『太陽編』の次に『大地編』の構想があったようです。NHKのドキュメンタリーでアイデアはいっぱいあるけど体力がついていかないと語っていた手塚氏。60歳で亡くなるなんて、早すぎます。

火の鳥展火の鳥展

出口手前に福岡伸一さんが横尾忠則さんへインタビューをしている映像が流れていました。

横尾さんは『火の鳥』を読んだことがないのでは?と思いました(「黎明編の次に未来に行っちゃうの?」と聞いていたので)が、横尾さんのお声が聞けてよかった。創作には今生の記憶だけでは大したものはできないとおっしゃっていました。創作には、輪廻転生で前世の記憶も必要ってことですね。

出口を抜けると「生まれ変わったら何になりたい?」と付箋に書いてもらうコーナーがありました。それも面白いけど、「火の鳥に登場するキャラクターの誰が好き?理由も教えて」にした方が共感もできるし絶対面白いと思うんだけどな。

火の鳥展

『火の鳥』は難しいけど大変興味深い漫画です。

手塚治虫がライフワークにした『火の鳥』は生と死、輪廻転生などを扱った漫画で、非常に哲学的。火の鳥の血を飲めば不老不死になるというわかりやすい要素はあるものの、私には理解できないくらい難しい話が多いです。

火の鳥は神なのか、魂なのか、エネルギーなのか…。時空を自由に行き来できる火の鳥が神なのだとしたら、それを生み出す手塚治虫も神かもしれませんね。(漫画の神様と言われますが…)

過去の話と未来の話を交互に行き来する『火の鳥』。私は過去側の話が割と好きで、『黎明編』が面白いと思っています。キャラクターは『乱世編』の弁太とおぶうにドラマを感じます。

手塚氏が描く女性は象徴的な絶世の美女ではなく、男にとってただ一人の愛しい恋人という形で描かれます。『鳳凰編』茜丸の恋人ブチは現実世界にいたらちょっと厄介ですが、実にチャーミングです。

2月に『ブラックジャック展』を見て、4月に映画『ジャングル大帝』を見て、NHKのドキュメント番組の再放送を見て、今日の『火の鳥展』。手塚治虫再考察の年!?


蔦屋重三郎
コンテンツビジネスの風雲児

鑑賞日:2025年 6月 4日
会 場:東京国立博物館

蔦屋重三郎展

私、舐めてました。蔦屋重三郎展、すごい人!
こんなに人がいるとは思わず、浮世絵を見に行ったと言うより、人の頭を見に行ったようでした。

今年のNHKの大河ドラマの主役である蔦屋重三郎。江戸後期の出版業者で、浮世絵師排出の名プロデューサーです。

私が蔦屋重三郎を知ったのは柳楽優弥主演の映画『HOKUSAI』でした。蔦重は絵師を育てる男で、勝川春章の弟子だった北斎(この時は勝川春朗と名乗っていた)にとって蔦重はキーパーソンでした。

蔦屋重三郎展蔦屋重三郎展

蔦屋重三郎は吉原の生まれ。貸本をしながら出版の道を模索していると、ひょんなことから吉原細見(吉原のガイドブック)を出版することになります。それがきっかけで出版業に足を踏み入れることになります。

出版業にあとから参入した蔦重はこれまでにない意表をつく作品を出し続け、同業他社を出し抜きます。本展の副題にもなっている ”コンテンツビジネスの風雲児” は生き延びるための知恵でした。

蔦屋重三郎展

蔦重が大事にした絵師に喜多川歌麿、東洲斎写楽がいます。
喜多川歌麿の美人画は本当に美しいですね。子供の頃には全く興味がなかったのですが、今見ると本当に綺麗だと思います。そして、ちょっと下膨れの顔に金山明博さんを思い出しました。

”三美人” には複数のパターンがあるのですね。
『ポッピンを吹く娘』は可愛かった。
写楽の絵の前で「顔つきから人柄がわかるわね」とお連れの方にお話しされている方がいました。(私には人柄まではわかりませんでした)
素晴らしい作品が多かったのですが、もう少し人が少ない状態で見たかったな…。

2016年に目黒区美術館の『色の博物誌』で色材について見ていますが、筆についても知りたくなりました。

蔦屋重三郎展蔦屋重三郎展蔦屋重三郎展

本展はNHKと共催で、ドラマのセットもありました。パネルの写真(↑上の画像)を撮る時は、みなさん気を使って譲り合って撮影していましたが、ドラマのセットはみなさん我先にと撮影されていました。この違いなんだろう。ちょっと面白い。

蔦屋重三郎展蔦屋重三郎展


GLAM -黒柳徹子、時代を越えるスタイル-

鑑賞日:2025年 6月 6日
会 場:そごう美術館

黒柳徹子展

女優、司会者、作家、ユニセフ親善大使の黒柳徹子さん。その華やかな部分だけをピックアップした展覧会。黒柳さんのファッションアイテムを中心に展示されていました。

エントランス、フライヤーにもなっている紅白歌合戦出場時に着用した、黒にゴールドの刺繍のゴージャスな衣装からスタートです。

エントランスを抜けるとたくさんのグラビアが並んでいました。お若い頃の徹子さんは写真からも弾けるようなエネルギーが感じられます。そしてキュートな笑顔が印象的でした。
最近のグラビアは雑誌用に撮影されたものが多く、被写体として貫禄のあるものばかり。貫禄はありますが下村一喜さん撮影の写真はとても美しい。そして特筆すべきは、奇抜なファッションに身を包んでいるにも関わらず、服に負けてないこと。これは黒柳徹子だからでしょう。

黒柳徹子展黒柳徹子展

黒柳徹子展黒柳徹子展黒柳徹子展

黒柳徹子展

徹子さんが着た洋服が多数並びます。有名ブランド、名のあるデザイナーの服、舞台衣装にもなりそうな個性的な衣装がたくさんありました。今年50年目になる『徹子の部屋』ですが、衣装は全て自分持ちだそう。しかも視聴者を喜ばせるために同じ服は着ないとのこと。年間約260着×50年!そりゃあ〜すごい数になりますよね。

ビーズ刺繍のデザイナーで徹子さんのマネージャー的な存在でもある田川啓二さんとファッションアイテムについて語っている映像がありました。

徹子さんの倉庫から田川さんが面白いものをピックアップして持ってきたそう。船の形のバッグや電話の形のバッグ、寄木細工の靴など珍しいアイテムを紹介していました。「私こんなの買ったの?」とケラケラ笑う徹子さん。可愛らしい!

黒柳徹子展

リメイクした洋服も並んでいました。仕立て直して大事に着るというのは徹子さんのお母様の影響もあるでしょうね。(膨大な数の衣装の一部はチャリティに出しているはずです)

本展では徹子さんの華やかな面だけを見せた展覧会で、衣装をチャリティに出しているといったボランティア活動等には触れていません。田沼武能さんが撮影したユニセフ親善大使の活動を見せる写真など社会的なメッセージは皆無。忘れてはいけないのは華やかな顔もボランティア活動をする顔も両方で黒柳徹子なのです。

黒柳徹子展

私が黒柳徹子さんを知ったのは『ザ・ベストテン』でした。子供の頃に好きだった番組の司会者でした。その後、トーク番組「徹子の部屋」を知り、お芝居をされている女優さんだと知りました。そして、ユニセフ親善大使であることも後に知ります。日本にパンダが来日する前からパンダのぬいぐるみを持っていた人でした。

徹子さんのお人柄は著書『窓際のトットちゃん』『続・窓際のトットちゃん』でよくわかります。

御年91歳の黒柳さん。まだまだ影響力ある方です。


ミニチュアベーカリーの世界展

鑑賞日:2025年 6月 6日
会 場:そごう横浜店8階催事場

ミニチュアベーカリーの世界展

催事場の一角に小さな囲いがあり、本展が開催されていました。
ミニチュア作家が集まり、作品を並べ、作家のSNSを公開するというものでした。

精巧に作られたミニチュアが並んでいました。小さなパンや洋菓子はどれも本当に美味しそうでした。あんな小さな作品を作り上げる作家さんはどんな指先をしているのでしょう。

小さいものに可愛らしさを感じるのは昔からあると思いますが、最近は流行っているのでしょうか? 最近のシルバニアファミリーブームとも関係あるのかな?

ちなみに私はガレット・デ・ロワのフェーブをコレクションしています。子供の頃は豆本を集めていました。。小さき物、好きです。


酒呑童子 ビギンズ

鑑賞日:2025年 6月12日
会 場:サントリー美術館

まぁ、これだけ『鬼滅の刃』にハマってる事だし、ここらで鬼の歴史を見てみっか! と思い立ち、行ってきました。日本最古の鬼の話、酒呑童子展です。

酒呑童子展酒呑童子展

平安時代の源頼光の鬼退治の話が狩野派の狩野元信による絵巻物として残されていました。

サントリー美術館が所有する絵巻が修復を終え、公開されました。大変美しい状態のものを見られました。

鬼が住んでいた山は丹波国大江山(京都府)とされていますが、近江国伊吹山(滋賀県)との説もあります。美術館所有の絵巻物は伊吹山説です。能の鬼退治の題目は大江山です。

物語は…。
都で若い娘が大勢行方不明になり、安倍晴明に娘たちの居場所を占わせると伊吹山に住む鬼の岩屋に捉えられていることがわかる。武家の棟梁、源頼光が鬼退治を命じられる。加護があるように氏神に参拝し、家来とともに伊吹山に向かう。人に扮した三柱の神に助けられ、酒呑童子に酒を飲ませ、酔って寝入ったところで首を切り落とす。

酒呑童子は自分を成敗しに来たかもしれないと疑いながらも源頼光とその家来を紳士的に迎え入れ、酒を酌み交わします。人間の生き血を飲み、若い女のももの肉を喰らう鬼たち。頼光と家来たちも平然と食したようです。体は大きく3メートルほどもあり、容姿端麗で40歳くらいに見えたそう。(鬼の描写が細かいっ!)容姿端麗は鬼舞辻無惨と共通してる!?

本展ではその酒呑童子の出生から生い立ちが見られる資料の展示もありました。江戸時代この絵巻物は複製されます。その時に酒呑童子の生い立ちが付け加えられることがあったようです。

それによると…、なんと! 酒呑童子はヤマタノオロチの息子だそうです! 古事記に記される古代の神様であるスサノオノミコトの話まで遡るとは思いませんでした。

スサノオノミコトに退治されたヤマタノオロチですが、その魂は生き続け、平安に入り、好意を寄せていたイナダヒメによく似た玉姫に自分の子供を産ませます。その子は小さい頃から酒を飲み、困り果て寺に預けられますが、ここでも酒の失敗から追い出され人里離れたところで生活し、魔境に落ちます。

スサノオノミコトに酒を飲まされ退治されたヤマタノオロチですが、その息子の酒呑童子も酒を呑んだ後に源頼光に首を切られます。お酒は癒しにも武器にもなります。

また、本展では能による『大江山』のダイジェストの上映もありました。こんな資料映像があるなんて、素晴らしい!

柔らかい女の肉だけを喰らう鬼。『鬼滅の刃』の沼鬼と共通点がありますね。
病床の源頼光の元に現れた土蜘蛛を藤原保昌が退治する話もあります。(退治された土蜘蛛は河原に晒されます)これは『鬼滅の刃』那田蜘蛛山とリンクしますね。

初めて行ったサントリー美術館。展示は工夫がなされ非常によかったです。また小学生向けのワークシートがあり、子供にも理解してもらおうという姿勢に好感が持てました。そして、「館内は音が響くので話し声はお控えください」(←一言一句は覚えていませんが、こんな内容)といった館内放送が流れ、これはすごいと思いました。公立の美術館も見習って欲しいです!

・・・・・・・・・・

”鬼”は人に使うもの、比喩的に使うものとあります。
子供の頃に絵本で見てきた鬼は、傍若無人で悪い奴でした。しかし、大人になって父の話になるほどと思ってから、鬼の見方も少し変わりました。

父によると、鬼は漂流してきた白人なのでは?とのこと。そんな一説があるのでしょう。

日本の村人と意思疎通が難しく、人里離れた所に住んでいて、異国人に興味を示した村の女性がなついた(異国人は女性に優しい)ことから村の男たちが敵対視して、悪者に仕立て上げたのではないかと。異国人は背が高く、村人とは違い大男。それだけでも村の男たちは怖かったことでしょう。そして、ワインを人間の生き血と見間違えたのではと。鬼が赤鬼と言われるのは、白人の肌が白く、顔色が赤く見えた(興奮した時とかかな?)のではないかということでした。なるほど、それっぽい話だなぁと思っていました。

その後、今となってははっきり覚えていませんが『ドラえもん』で似たような話がありました。あ、それ聞いたことある! と思ったものでした。


「ゆうちょ」150年

鑑賞日:2025年 6月20日
会 場:郵政博物館

郵政博物館郵政博物館

ワタクシ、大失敗しました。

常設展を興味深く見たまでは良かったのですが、一番奥の展示室、企画展示の部屋を見ずに帰ってきてしまいました。しかも、帰宅するまで気付かず!
嗚呼なんたる失態!
4年前の『日本郵便の誕生』を見られなかったので、常設展で満足しちゃったのです。
あ〜、バカばか!
なので、常設展のレポートになります。

郵政博物館

日本の郵便事業は明治維新の後に始まります。事業がスタートしたのは明治3年でした。

日本の近代化に大きな役割を担った改正掛。郵便は改正掛が手がけたプロジェクトの一つでした。渋沢栄一が改正掛の掛長。郵便部門で中心的な役割を果たした人物が前島密です。(NHK大河ドラマ『青天を衝け』で三浦誠己さんが演じていました)

イギリスへの視察で通信の重要性を痛感した前島密は帰国後に国内の郵便の態勢を作ります。NHK大河ドラマ『青天を衝け』では、ポストの設置や手紙の授受、「郵便」という名称が出来るまでをドラマチックに描いていました。

郵便に欠かせない時間を確認する時計や、重さを確認する計量器なども正確さが求められ、西洋に倣って改善していきます。

郵政博物館郵政博物館

郵便外務員には制服がありました。和装が中心だった当時、洋装の郵便配達員は憧れの職業ではなかったでしょうか。

当初の郵便マーク、赤線に赤い丸が制服の袖口にあしらわれています。郵便馬車や旗にもこのマークが使用されていたそうです。

明治20年に「〒」マークが逓信省のマークになり、制服の袖口も「〒」に変わりました。「〒」は逓信省の「テ」だそうです。

郵政博物館

宛先が毛筆で書かれた封書がたくさん重ねられていました。ポストに投函された郵便物をザルのようなもので受ける、当時をイメージしたレプリカ展示ですが、なぜか胸が熱くなってしまいました。家族や知人に手紙を認めるのは愛だと感じました。

ポストにも変遷があり、赤い円柱になったのは明治34年からのようです。赤いのは目につきやすくするため、円柱なのは交通の妨げにならないからだそうです。現在は赤いけど四角です。でも、最近は赤くない変わったペイントのポストを見ることもあります。

郵政博物館郵政博物館

郵便配達員は夕暮れでも、また戦場へも手紙を運びます。
野戦局員はサーベルを携帯していました。国内でも、現金書留を狙った強盗があったことから、ピストルを所持していたそう。命懸けの仕事です。

為替や貯金を扱うようになったのは明治8年(1875年)からだとか。(国内初の銀行、第一国立銀行は明治6年開業です)あ、だから今年がゆうちょ150年なのね!

郵政博物館

切手は世界の切手が莫大な量の展示がありました。すべて見るには1日かかるかもしれません。(ここは撮影禁止でした)

前島密は通信の必要性を考えていた人。郵便だけではなく、海運、新聞、電信、電話、鉄道、教育、保険などなど、新しい国のためにたくさんの事業に関わったそうです。

郵政博物館

新しい所蔵品の紹介のブースがありました。レンピッカの絵の切手、インパクトがあります。
アニエスベーデザインの切手はハート型。そうだ、アニエスべーもハートのモチーフ多かったわ。ハートはサンローランだけじゃなかった!


松本零士展

鑑賞日:2025年 7月 1日
会 場: 東京シティビュー

松本零士さん没後大規模な作品展。開催前からとても楽しみにしていました。

松本零士展松本零士展松本零士展

松本零士展

エントランスには999に乗り込もうとする哲郎とメーテルがいました!

写真を何枚も撮っていてはたと気がついた。これ、夕暮れの薄明かりや日没の星空をバックに写真を撮れば、もっとロマンティックな写真になったのかも! ゴダイゴのヒット曲がかかり、左右には映画『銀河鉄道999』の名場面の巨大なパネルがあって、ワクワク感高まるエントランスでした。

原画展示の前に松本零士さんの原作漫画の表紙のパネルが並んでいました。初期の頃の作品は知らないものばかりでしたが、徐々に宇宙が舞台のものや、美しい女性が現れます。少女漫画を描いていたこともあり、動物は愛らしく、女の子は可愛く、女性はセクシーです。

たくさんの原画が展示されていました。

松本少年は手塚治虫さんの漫画に影響され、自分でも漫画を描き友人に読ませていたそう。初期の作品は虫を描いたこともあり、なんとなく手塚治虫さんに画風も似ていました。初期の作品には奥様の牧美也子さんとの共作もありました。

宇宙をテーマにした作品が続き、その後「男おいどん」の連載がスタートします。清潔感皆無の男ですが、愛着が湧くのは後のトチローに重なるからでしょうか。松本零士さんご本人の姿との説もありますね。

松本零士展松本零士展

『男おいどん』の後は、大ヒットアニメーション作品が続々登場します。

『宇宙戦艦ヤマト』はリアルタイムではなく再放送で見ましたが、『銀河鉄道999』『宇宙海賊キャプテンハーロック』はリアルタイムでアニメを見ていました。『惑星ロボ・ダンガードA』は再放送で、『1000年女王』は新聞の連載で読みました。私が子供の頃には日常に松本零士さんがいました。

松本零士さんの漫画にはそれぞれの世界がありますが、部分的に重なることがあります。
《999宇宙》《ハーロック宇宙》《男おいどん宇宙》総称して零次元宇宙と言うそう。なるほど!

松本零士の世界は横だけではなく縦にも繋がっています。

『銀河鉄道999』にハーロックやエメラルダスが出てきて哲郎と交流することが子供心に嬉しかったことを覚えています。繋がっているのです。そして『さよなら銀河鉄道999』でハーロックが永遠の命について語ります。これが子供心に強烈に心に残っています。(意志が繋がるは『鬼滅の刃』のテーマでもあります)

松本零士展

たくさんの原稿には広く深い宇宙がありました。たくさんの星があり、地球はその中の1つに過ぎません。

そして印象的なのは、人物の背景に描かれている宇宙船内のコクピットのメーターの数々。アニメを見ていた子供の頃にも、999の電気回路に灯りがつく様子に興奮したことを思い出しました。

会場にはハーロックの映像(音声なし)や映画の999のラストシーンが映し出されていました。哲郎の「メーテルぅぅぅぅ〜」の声やナレーションの城達也さんの声にウルウルしてしまいます。

私は子供の頃から現在に至るまでたくさんのアニメ作品を見ていますが、その中で一番美しくミステリアスな女性はメーテルだと思っています。

・・・・・・・・・・

私が鑑賞した日は開催から10日後。それなのにもうメーテルのグッズの一部が売り切れになっていました。受注製品で版画もありました。素敵でしたが、2012年に日本橋高島屋で見たメーテルが好きだな。

・・・・・・・・・・

随分昔のことですが、プレイステーションのゲームで『松本零士999』というゲームソフトがありました。『銀河鉄道999』がベースのゲームで、松本零士作品のキャラクターが大勢登場していました。おいどんさん(大山昇太)やアナライザーなどが出てきます。

プレイヤーは鉄郎になりメーテルと一緒に銀河超特急999に乗り込みアンドロメダを目指す旅に出ます。旅の途中停車する星でさまざまな事件(イベント)が起こります。

確か、1回目をクリアすると哲郎に代わって、エメラルダス、トチロー、ハーロックをそれぞれ操作し、最終章になった?ような…。鉄郎がメインストーリーで、エメラルダス、トチロー、ハーロックは同時進行の裏の話。この伏線をプレイしてこの作品の核心に辿り着く、といったものだったと思います。細かいことはすっかり忘れてしまったのですが、みどりさん(エメラルダス)がトチローに似たおいどんさんにトチローを思い抱きしめるシーンがあったと思います。