ブラックジャック展
鑑賞日:2025年 2月17日 |
会 場:そごう美術館 |
エントランスからすぐに、「手塚治虫は古い」「虫プロ倒産」といったネガティブな言葉がクローズアップされ、驚きました。
手塚氏の長男、長女、担当編集者が当時の様子をビデオで語っていました。虫プロ倒産当時の家庭の状況や漫画の新しい流れ(新しい人気漫画家の誕生など)が語られ、手塚氏がどんどん追い詰められていく様がリアルに見えてきました。そんな逆境の中でブラックジャックは誕生したのです。
虫プロは倒産し、漫画家としての人気も低迷していた手塚治虫の「漫画家としての最後を看取る」という意味での新連載『ブラックジャック』は起死回生の大ヒットになりました。
少年漫画にはありえない、医者が主人公。当時としては珍しい一話読み切り。これら全てが斬新だったのでしょうが、一話一話を丁寧に紡ぎ出す手塚治虫の哲学が絶賛されたということでしょう。
会場には膨大な量の原画が展示され、読み進めるごとに天才外科医ブラックジャックの世界に引き込まれました。完璧ではないところも、時には世直しする姿も非常に魅力的です。
長女さんが「私に似ている」と語っていたピノコは一服の清涼剤。ダークな世界に咲く一輪の花のようです。(誕生は衝撃的ですが)
展示品の中に手塚氏の医師免許の複製がありました。こちらは2009年に江戸東京博物館で見た『手塚治虫展』の時に見たものと同じでしょうか?
TBS FASHION GALLERY 2025
ザ・ベストテン展
鑑賞日:2025年 3月13日 |
会 場:TBS赤坂BLITZ スタジオ ホワイエスペース |
久米宏さん、黒柳徹子さん司会で一世を風靡した生放送の歌番組『ザ・ベストテン』は1978年1月から1989年9月までTBSで放送されていました。
ここ最近の昭和歌謡ブームで再注目されているのでしょう。私と同年代の方ばかりでなく、お若い鑑賞者もちらほらいらっしゃいました。
非常に狭いホワイエスペースに懐かしいベストテンの世界がありました。展示物は非常に少なく、ビデオ上映もパネル展示も限られた歌手だけで正直見応えはありませんでしたが、私は沢田研二♥を見られただけで大満足でした。
モニターには放送開始から終了までの12年のダイジェストが流れていました。1時間半から2時間くらいだったでしょうか。ジュリーは最初の年から1982年くらいまでの映像が流れていました。
肖像権などの問題があるのでしょう、番組の総出演者のほんの一部の歌手の映像だけ。百恵ちゃんやピンクレディ、連続1位記録の寺尾聰さんの映像もなし。物足りなさはあるものの、みなさん立ち止まって見入っていました。(フリを真似する人も!)
『ザ・ベストテン』が面白かったのは、ベストテンに入った歌手を追いかけて中継してまで歌ってもらうこと。そのドタバタにライブ感がありました。新幹線のホームで中山美穂さんが戸惑いながら歌っていました。
沢田研二を筆頭に、中森明菜、小泉今日子、本田美奈子、チェッカーズ… みなさん競うように華やかな衣装です。そしてセットも面白い。悪ノリして意味不明なセットもありました。昭和ですね。
黒柳徹子さんの協力があったようで、黒柳さんの衣装が数点展示されていました。黒柳さん、スリムな方だったんだなぁと、衣装のウエストを見てしみじみ思いました。
ジュリーのパネルには早川タケジさんの名前も上がっています。裏方である早川さんのお名前が上がっているのは非常に嬉しいです。当時のジュリーの個性を作り上げた主要スタッフの一人であり、なくてはならない人でした。
『ザ・ベストテン』はジュリーがテレビに出なくなるまでは毎週見ていました。大好きな番組でした。
漫画家生活60周年記念
青池保子展
鑑賞日:2025年 3月22日 |
会 場:弥生美術館 |
中学生の頃大好きだった漫画『エロイカより愛をこめて』。その作者、青池保子さんの展覧会がありました。鑑賞者は私よりもお姉様ばかり。グッズ売り場で少女に返ったかのようにはしゃぐ姿が可愛らしかった!
作品は青池保子さんのデビュー作から順番に並びます。『イヴの息子たち』など作品のタイトルは知っているものの読んだ事がない作品ばかり。それでも作品の美しさに見惚れてしまいました。
2階に上がると『エロイカより愛をこめて』の世界に入ります。懐かしい、懐かしい。大好きだった少佐や伯爵、ツェットやジェイムズくん、本当に懐かしい。そして美しい。(私は少佐、友人は伯爵&ツェット推しでした)
原稿ももちろんありますが、カラー原画が素晴らしい! 保存状態が非常に良くて時間の経過を感じさせません。キラキラしています。当時これらの原画のほぼ全てを掲載したイラスト集を持っていて、よく眺めていたことを思い出しました。(今はありません。涙)
ブラックジャックとコラボしたコミックの展示もありました。秋田書店だから実現したのですね。
あらためてカラー原画を見ると、ヨーロッパのアートや文化が色濃く反映されていて、青池保子さんの知識の深さに驚かされます。
中学生だった当時、この作品で、NATO や K.G.B 、C.I.A 、ローマ法王などを知りました。
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美術館の敷地内にある夢二カフェ港やではコラボメニューがありました。少佐の芋ケーキ(カルトフェルトルテ)です!
コックコート姿の少佐に目が止まり迷わず入店しましたが、すでに本日分は完売していました。毎日数量限定のようです。
ケーキは終わったけどカプチーノならあるとのことだったので、少佐のいのししカプチーノを注文。おまけにオリジナルのコースターをいただきました! これは嬉しい。
本展は6月1日まで開催しているので、芋ケーキを食べるチャンスはまだあります。少佐に「フン」と言われそうですが。
とみこはん個展 Freely
鑑賞日:2025年 4月 3日 |
会 場:文房堂 ギャラリーカフェ |
神保町の文具店 文房堂の3階のカフェの壁を利用したギャラリーでとみこはんの個展が開催されていました。
消しゴムはんこを使った作品ですが、昭和の時代の消しゴムハンコではありません。アートです。
作品は美味しそうな食べ物ばかり。でも美味しそうなだけでなく、その佇まいがとてもかわいらしいです。
「おにぎり山」や「Chips」も素敵でした! グッズ展開もあります! 4月14日で開催しています。
にしむらゆうじのひみつ展
鑑賞日:2025年 4月 3日 |
会 場:松屋銀座8階イベントスクエア |
Lineスタンプで知った にしむらゆうじさん。お馴染みの動物たちが愛嬌を振りまいていました。
2015年に初めてLineスタンプを作り、今年で活動10周年ということです。10年でこれほどたくさんの人の心を掴むというのはすごいことです。
にしむらさんのキャラクターは表情が非常に豊か。生きているかのよう。動物たちが会場内を動き回っているように感じました。(動物たちが生き生きとしている姿を見て、鳥獣戯画を思い出しました)
そしてキャラクターたちは皆とても柔らかそう。可愛らしさ倍増です。
ゆる〜いオチのついた漫画が微笑ましい! その漫画によると、にしむらさんと動物たちは共同生活を送っているようでした。
にしむらさんと動物たちのLineの会話もありました。さして重要でもない会話が(失礼!)エンドレスで続いていました。
壁の隙間に書き込みが数点ありました。西村さん自身が壁に書き込んだものだと思います。
金子國義・四谷シモン「1967年、ある日」展
鑑賞日:2025年 4月27日 |
会 場:ギャラリー LIBRAIRIE6 |
画家 金子國義と人形作家 四谷シモンの展覧会。恵比寿にあるギャラリーに印象的な作品が並んでいました。
金子國義さんが生み出す、眉が太く細身の女の子たちはとてもキュート。媚びないツンとした顔が魅力です。若い女の子でも品があります。この子達は他に変わるものがありません。アリスシリーズも素敵です。
シモンさんの人形は4体ありました。
今回非常に驚いたのが可愛らしい女の子の人形。階段にちょこんと座るその子は、25年前に見た恐ろしいほどに目に力がある人形たちとは一線を画し、微笑みを讃え、青い目に一点の曇りもない少女でした。ピンクのリボンも可愛らしいそのお顔を、じっくりと拝見させていただきました。シモンさんが製作する人形のイメージが変わりました。
他にも、胸像のようなものや、シモンさんによるパステル画も数点ありました。
金子さんとシモンさんはセツ・モードセミナーで出会ったそうです。(やっぱ、セツ・モードセミナーってすごいところだなぁ)
出会った時やその後の交流など、シモンさんが短かな手記を寄せていました。
パーティフォトもあり、コシノジュンコさんのお顔も見られました。(お仲間ですもんね)
グッズにトートバックがあったのですが、この少女のバックはなかったのが残念。
本展は5月18日まで開催されています。シモンさんが在廊されることもあるようです。
火の鳥展
鑑賞日:2025年 5月20日 |
会 場:東京シティビュー |
手塚治虫の大作『火の鳥』を、本展を企画された生物学者の福岡伸一さんが解説する展覧会でした。最後に何故か、横尾忠則さんとの対談がありました。
本展の導入部分で、手塚治虫氏が影響を受けたというバレエ『火の鳥』やソビエトのアニメ『イワンと仔馬』の映像が流されていました。これは非常に興味深かった。鳥のように滑らかで美しいバレリーナと鳥の羽を腰に刺して踊るアニメの子供。どちらも大変美しいものでした。これは見られてよかったです!
バレエとアニメの映像を超えるとパネルや原画の展示が始まります。
連載順に原画が並んでいましたが、思ったよりも少ないと感じました。何故か膝下の低い展示スペースに原画が並べられているブースがあり、中腰で見下ろさなければならず、ちょっと見づらい。床も近未来を意識したかのような金属板を並べた箇所があり、人が歩くたびにガタガタうるさい。普通の展示でいいんだけどなぁ。
原画の他には我王と茜丸が作った鬼瓦の展示(!)がありました。
未完の大作と言われる『火の鳥』ですが、『太陽編』の次に『大地編』の構想があったようです。NHKのドキュメンタリーでアイデアはいっぱいあるけど体力がついていかないと語っていた手塚氏。60歳で亡くなるなんて、早すぎます。
出口手前に福岡伸一さんが横尾忠則さんへインタビューをしている映像が流れていました。
横尾さんは『火の鳥』を読んだことがないのでは?と思いました(「黎明編の次に未来に行っちゃうの?」と聞いていたので)が、横尾さんのお声が聞けてよかった。創作には今生の記憶だけでは大したものはできないとおっしゃっていました。創作には、輪廻転生で前世の記憶も必要ってことですね。
出口を抜けると「生まれ変わったら何になりたい?」と付箋に書いてもらうコーナーがありました。それも面白いけど、「火の鳥に登場するキャラクターの誰が好き?理由も教えて」にした方が共感もできるし絶対面白いと思うんだけどな。
『火の鳥』は難しいけど大変興味深い漫画です。
手塚治虫がライフワークにした『火の鳥』は生と死、輪廻転生などを扱った漫画で、非常に哲学的。火の鳥の血を飲めば不老不死になるというわかりやすい要素はあるものの、私には理解できないくらい難しい話が多いです。
火の鳥は神なのか、魂なのか、エネルギーなのか…。時空を自由に行き来できる火の鳥が神なのだとしたら、それを生み出す手塚治虫も神かもしれませんね。(漫画の神様と言われますが…)
過去の話と未来の話を交互に行き来する『火の鳥』。私は過去側の話が割と好きで、『黎明編』が面白いと思っています。キャラクターは『乱世編』の弁太とおぶうにドラマを感じます。
手塚氏が描く女性は象徴的な絶世の美女ではなく、男にとってただ一人の愛しい恋人という形で描かれます。『鳳凰編』茜丸の恋人ブチは現実世界にいたらちょっと厄介ですが、実にチャーミングです。
2月に『ブラックジャック展』を見て、4月に映画『ジャングル大帝』を見て、NHKのドキュメント番組の再放送を見て、今日の『火の鳥展』。手塚治虫再考察の年!?