鑑賞日:2019年1月 8日 |
会 場:三鷹市美術ギャラリー |
スコットランドの民族衣装から発展していったタータン。本展はタータンの歴史を紐解く素晴らしい展示でした。
展示室に入ると初っ端に目から鱗の情報がありました!
《タータンチェック》とよく言いますが、イギリスでは《タータン》と《チェック》はそれぞれ別のものを指していて、一纏めにすることはないようです。《チェック》というのは、大きさが同じ正方形の格子
と伝統的なタータンではない格子
を指すようです。ということで《タータン》は伝統的な格子柄
です。《タータンチェック》とは日本独自の表現なのですね。
タータンといえばすぐにバーバリーを思い出す私。それ以外なら制服のイメージがあります。しかしこういったイメージはあながち間違いではないようです。
タータンは一族や階級が独占的に着ていた織物で、その歴史は250年前にまでさかのぼるとのことでした。(日本の家紋に似てる?)
スコットランドにはタータンのパターンをリスト化し、登録、管理をしている団体もあります。タータンに使われる色やその太さなどには一つ一つに意味があります。登録されたタータンは財産だということですね。
200年前の肖像画に描かれた男性がタータンのキルト姿です。タータンは正装なのです。
英国王室には現在も続く伝統のタータンがあるようです。現在進行形で一族のためのタータンがあるということです。
近年になるとタータンは限られた人々だけのものではなく、誰もが着られるファションに取り入れられます。デザイナーが作る奇抜なファッションも部分的にタータンが入るとなぜかシックで上品になります。(ヴィヴィアン・ウエストウッドの作品はタータンを使っても伝統ではなくパンクですが)
私と同年代ならベイシティローラーズの衣装も記憶に焼き付いている事でしょう。そして『キャンディ・キャンディ』の丘の上の王子様も!
馴染みのあるタータンといえば伊勢丹の紙袋でしょうか。伊勢丹はデザインをリニューアルしてからも、色合いの違うタータンを使っていますね。
タータンは品があっていいなぁと再確認した展覧会でした。
鑑賞日:2019年3月1日 |
会 場:お札と切手の博物館 |
国立印刷局が運営しているこの施設、偽造を防ぐための技術がぎゅっと収まった小さな紙の秘密を惜しげもなく公開しています。
1階は偽造防止の様々な技術を紹介しています。お札に使われるインキは印刷局が作っているそうです。そんなところから始めているのかと思いましたが、偽造防止対策の一番の根幹とも言える部分なので、そりゃそうだと納得。
お札は凹版印刷という技術で印刷されています。お札の原版に彫刻し、その溝にインキを流し込んで圧力をかけて紙に移し取る仕組みです。なるほどお札のざらつきはこれなんですね。インキの他にも色々な技術があります。1枚のお札にすかしが数カ所もあります。お札にホログラムがついた時には驚いたものでしたが、現在ではさらに進化し、傾けると色が変わるインキなども使われています。1枚の紙幣の中に偽造防止の技術が幾重にも詰め込まれていることがわかります。(帰宅してから、お札をまじまじと眺めてしまいました)
2階への階段手前には1億円を持ち上げる体験ができるコーナーがありました。透明のケースに入った1億円はラップのようなビニールに巻かれた大きな一つの塊でした。ケースには穴が二箇所空いていて、そこから手を入れ、ケース内ではありますが1億円を持ち上げる体験ができます。1億円は1万円札が1万枚で10kgです。そして体験。1億円はなかなかの重さでしたが、あれならワタクシ3億円くらい持てます!!!
1億円の横には切手の穴を開けるパンチがありました。一般的な事務用の穴あけパンチと同じ原理で穴が開きます。切手用は穴が小さいので細かなデザインが可能なのでしょう。体験できるパンチは穴で『印刷局』と開きました。聖徳太子が微笑む記念スタンプも押してきました。
2階に上ると国内外の紙幣と切手が展示されていました。国内のお札のデザインの移り変わりや、海外のお札と切手も展示されていました。
懐かしい聖徳太子のお札は現行のお札よりもふたまわりは大きいでしょうか。色合いが渋くて威厳があります。青い五百円札も懐かしい! 海外のお札はカラフルで、見慣れないせいもありおもちゃの子供銀行券のように見えてしまいました。
常設展ではなく特別展とのことですが、無料だし、見せる展示も体験する展示もセンスがあって、とても楽しめました。
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*本展鑑賞1ヶ月後の4月9日に新しいお札のデザインが発表されました。カラフルでちょっぴりpopな仕上がり。見慣れないせいか、おもちゃのお金みたい。聖徳太子もさぞかしビックリするでしょう。でもこれが現在の日本の最高峰の技術で作られた印刷物なんですよね。1万円札:渋沢栄一、5千円札:津田梅子、千円札:北里柴三郎、2024年に刷新予定です。
鑑賞日:2019年3月1日 |
会 場:国立科学博物館 |
昨年は明治維新から150年にあたる年。本展は明治から平成までの技術や生活用品の変遷を見ながら日本の近代化の軌跡を辿る展覧会でした。(2018年4月から2019年3月まで、明治150年というキャンペーンで、様々な企画が日本各地で行われていました。これは国を上げてのキャンペーンだったと思います)
日本の近代化は国内の政治や文化が一変する明治維新から始まります。当時の志のある武士や思想家、学者達が日本の行く末を考え、国の内外で学んで行ったことから今日の日本に繋がります。まるで宇宙の始まり、ビックバンのようですね。
昭和の高度経済成長期に花形となった電化製品や自動車などがたくさん展示されていました。昔を懐かしむ、私の親世代の方々が足を止め、昔話をされながら鑑賞する姿があちこちで見られました。鑑賞者のおしゃべりでうるさい美術展は好きではないのですが、今回ばかりは納得でき、微笑ましくさえ思いました。
戦後の貧しい時代に、武器を置き企業戦士になった先輩方が作り出した道具の数々は、生活の向上を目指しただけの無機質なものではなく、新しい時代を共に生きる人々への愛情が詰まった製品だったのだと感じました。(雰囲気は違いますが戦後復興の中の人々のエネルギーという点では2010年に見た『SWINGING LONDON 50's-60's』に通づるものが有ります)
本展は『お札の色 切手の色』と同じ日に鑑賞しました。日本人の器用さと探究心を見せられた1日だったような気がします。
鑑賞日:2019年3月1日 |
会 場:国立科学博物館日本館地下1階多目的室 |
『日本を変えた千の技術博』を見終え、国立科学博物館内の売店に行く途中で目に入ったポスター。そのまま足が向いてしまいました。
本展は陛下のご研究と、皇居内の動植物の調査を行った国立科学博物館の研究の紹介です。
天皇陛下が皇居内の動植物を御研究されているのは知られていますが、その研究発表を一般向けにしかも砕いた言葉で分かりやすく公開されているのは知りませんでした。『天皇陛下御在位三十年記念展示』という副題が付いているので今回限りの特別展なのかもしれませんが。
皇居内に狸がいることにはさほど驚かなかったのですが、興味を持たれた陛下が、その狸の食物を調べるために糞を拾い解析しているとのことで、本当に驚きました。陛下は研究者でいらっしゃるのだと思いました。
科博の研究では皇居内には絶滅危惧種の植物が数種類生育していることがわかったそう。また、生息する植物の種類が増えたことから、大気の汚染が減ってきていることなどもわかったようです。あまり人が踏み入れないからこそでしょうが、東京のど真ん中にこんな自然があるというのは素敵ですね。
鑑賞日:2019年3月11日 |
会 場:有楽町マルイ8階特設会場 |
若い頃、だいぶお世話になったUDO。どれだけUDOが招致したミュージシャンのライブに通ったことでしょう。
ミュージシャン来日時のポスターを縮小印刷したパネル展示だったので味気なさはありました。それでも圧倒的な量の懐かしいポスター群に当時の自分と重ね合わせて楽しめました。見たライブや行けなかったライブ、こんな人も来日してたのかと驚いたり。アーティストの若かりし頃の写真に時間の流れを感じました。
ライブ会場で使われたバックパス。これはUDO展ならではの展示物ですね。チケットぴあができる前のチケットは味がありました。THE WHOが残していった敗れたタンバリンやリーオスカーのハーモニカもならではの展示物。
スティーヴ・ヴァイはステージ上でギターのネック折っちゃったみたいです。
たくさんのミュージシャンが残していったギターは、UDO関係者への感謝の証でしょう。これを見ても分かる通り、息長く音楽活動を続けられるミュージシャンは音楽の才能を持ち、さらには周囲の人に感謝を伝える義理堅さのある人なのだと思います。
鑑賞日:2019年3月19日、4月18日、4月30日、5月13日、5月21日、6月4日 |
会 場:TOC五反田メッセ |
会期中鑑賞は3回までにしようと思ったのに、結局6回鑑賞してしまいました。撮影自由だったので、その都度たくさん撮りました。このページ内に収まりそうにないので別ページを作ります。しばらくお待ち下さい。
鑑賞日:2019年3月23日 |
会 場:松屋銀座8階イベントスクエア |
安定した人気のシルバニアファミリー。招待券を頂いたので見てきました。
たくさんのちびっこが家族と一緒に鑑賞していました。
私も私の子供たちもシルバニアファミリーに馴染みがなかったので接点がなかったのですが、よくよく見ると動物たちの顔が驚くほど可愛い! 黒いつぶらな瞳と目があったら離れられなくなるほどの可愛らしさがありました。
シルバニアファミリーはうさぎのイメージが強かったのですがうさぎの他にもたくさんの種類の動物たちが家族を従えていてびっくり。カエルの子供はオタマジャクシではなく背の低いカエルだったのがちょっと笑ってしまいました。どの動物もみんな二足歩行で人間と同じ社会生活を営んでいるようです。
シルバニアファミリーの家はドールハウスそのもので、ああこれは子供向けのおもちゃだけではなく、大人へのアピールもできるんだなと思いました。ガレットデロワのフェーブを集めているワタクシ、ドールハウスにハマったら抜けられなくなりそうなので、グッズ売り場に並んでいたかわいいシルバニアのお人形も買わずに会場を出ました。
鑑賞日:2019年3月23日 |
会 場:Bunkamura ザ・ミュージアム |
覚悟はしていましたが凄い人! デートコースになっていたのでしょうか、驚くほどたくさんのカップルがいました。
2014年、松屋銀座で開催されていた『くまのプーさん展』で見たコッチフォード・ファームの写真をもう一度見られるかな〜と思って行ったのですが、ありませんでした。
松屋銀座の『くまのプーさん展』はディズニー関連の商業的なアイテムが多かったのですが、本展は原画です。ディズニーアニメのプーさんもかわいらしいですが、クラシックプーとも言われる原画もとってもかわいいです。ですが、ものすごい人だったのでゆっくり見られませんでした。
私は2種類のチラシを持っています。1枚は前年に出たものでしょう。「2019年2月、開催決定!」という”第一報”的な告知のチラシです。この裏面がとっても可愛らしい! 別バージョン(開催中の時のもの)は見開きがある変形の大きさ。表面は変わらないのですが裏面は見開き部分を広げるとチケット代やらグッズの画像やらが載っています。見開き部分を広げない状態では、会場のBunkamura ザ・ミュージアムの地図が見切れてしまいます。先に出ていたチラシの方がいろいろな情報を詰め込んだ新しいものよりもシンプルだけどcoolだと思います。ちょっと気に入っています。
鑑賞日:2019年5月5日 |
会 場:ちひろ美術館・東京 |
2000年7月に伊勢丹美術館でで見た『ちひろと世界の絵本画家たち』以来、行ってみたいと思っていた、ちひろ美術館。住宅街の中にひっそりと可愛いらしく佇んでいました。
ちひろの絵にはたくさんの子供達が登場します。柔らかな水彩画の中に子供たちの気持ちや興味を捉えています。可愛らしいだけではなく、自我が芽生えた子供の顔にはしっかりと表情がありました。子供達を見つめ続けるちひろはビッグマザーでした。
本展ではちひろの作品の他、ちひろの作品の中で子供達が着ている洋服を文化服装学院の生徒さんが再現したドレスが展示されていました。絵から抜け出てきたような可愛らしさに、心がほんわかとしました。ちひろは文化出版局の雑誌「装苑」に子供服のデザイン画を描いていたようです。また、一時期ちひろは文化服装学院で書を教えていたこともあったそう。文化服装学院の学生がちひろのドレスを縫うというのは時間を超えたエール交換。とても素敵ですね。あの10点の可愛らしいドレスをちひろが見たらさぞかし喜んだことでしょう。
本展の図録はないとのことでしたし、作品の写真撮影もNGだったので、記憶の中だけにしかないあの10点の洋服たち。ふんわりと、ほんわかと、美術館と一緒に私の記憶に残ります。
鑑賞日:2019年5月19日 |
会 場:ギャラクシティ2階わーくしょっぷスタジオ |
娘と一緒に行ってきました。
美術館でも展示室でもなく普通の部屋での展示でした。板張りの部屋に靴を脱いで入りました。
当日は葉祥明氏のトーク&サイン会があり、定員は限定40名。原画展示をするには狭い部屋だったので、40人でも人で溢れかえった感じでした。
原画を見ていると館長さんから座るように要請されました。そこに登場したのが葉祥明さん。小柄な方でしたが目がキラキラしてて実にエネルギッシュ! マシンガンのようなトークが始まりました。
ユーモアがあり笑いのツボも押さえていて、実に話し上手! でも彼が言いたいことは平和が大事。戦争はしてはいけない
だったのだと思います。彼の絵に入り込めれば、そこは戦争なんてない世界なのです!
優しい親子の姿や白い犬などのゆったりとした原画からは想像ができないようなエネルギッシュな方でしたが、心優しい方だということがわずかな時間で強く伝わって来る、とても素敵な方でした。
(葉祥明さんはセツ・モードセミナーの卒業生だそうです。私は2017年に『長澤節展』を見ました。)
鑑賞日:2019年6月13日 |
会 場:森アーツセンターギャラリー |
割引券を頂いたので行ってきました。
2014年に銀座松屋でも『ムーミン展』を見ているのですが、本展はフィンランドにあるムーミン美術館の協力もあるせいか、流石のボリュームでした。原画の他、作家のトーベ・ヤンソンさんの生活や、ムーミン誕生の秘話も紹介されていました。(ムーミントロールというお化けから発展していったようです)
たくさんの挿絵が展示される中で動的に見せている工夫もありました。本の形の置物にプロジェクションマッピングでページをめくるアクションをつけて挿絵を見せていました。私はその挿絵の美しさと世界観に改めて驚きました。小説の挿絵でありながら、生き生きとしたキャラクターたちに注目が集まらないわけはなく、その後の世界的な展開も納得です。挿絵の原画展をこれまでたくさん見てきましたが、こんな表現は初めて。本来の姿でありながら、新しい試みです。
日本での成功は小説出版後のアニメ作品からのようです。ヤンソンさんはアニメの放送開始に合わせて来日したそうで、その当時の写真も展示されていました。ヤンソンさんは日本の浮世絵に影響を受けたようなので、日本に興味もあったことでしょう。きっと滞在中は楽しんだことでしょうね。
最後のブースでは、広重や北斎の作品と、そこから影響を受けて描かれた作品が並んで展示されていました。波や雨の細かな線がヤンソン作品に取り入れられている様を、ちょっと嬉しく思いました。ゴッホがジャポニズムとして自身の作品の中に浮世絵を落とし込んでいるのとは違った形で融合しています
鑑賞日:2019年6月14日 |
会 場:国立科学博物館 |
2010年に『大哺乳類展 陸のなかまたち』、『大哺乳類展 海のなかまたち』と見てきたので「おっ? シリーズものか?」と思い、行ってきました。今回は陸の仲間も、海の仲間もみんな一緒です。
フライヤーやチケットのデザイン、色の使い方も含め、『大哺乳類展 陸のなかまたち』、『大哺乳類展 海のなかまたち』に雰囲気が似ています。早々に出された第一報的なチラシに書かれたただいま!
とは前回鑑賞した人たちに向けてのメッセージですね。
小学生の社会科見学らしき団体さんと一緒になりました。なんだか人が多く、とても賑やかだったので、さ〜っと流し見てきてしまいましたが、動物たちの歯の形には「うまくできてるなぁ」と感心しました。イッカクの牙は美しい武器ですね。
最後の最後に…。
展示室から売店に向かう通路手前にシロナガスクジラの胃の中にあったものが展示されていました。
プラスティックゴミなどの人間の生活用品です。動物たちの餌の捕獲方法などを詳しく丁寧に展示していた本展。シロナガスクジラはこんなものを飲み込んでいました。これは餌ではありません。この展示は人間たちへの警告ですね。社会科見学の子供達はこれも見たかな?
鑑賞日:2019年6月14日 |
会 場:国立科学博物館 日本館1階企画展示室 |
『大哺乳類展2』で入った国立科学博物館。実は、こちらの展示が見たくて入ったのです! 国立民族学博物館と国立科学博物館の共同企画である本展。ビーズを深く掘り下げた展示で素晴らしかったです。
ビーズは10万年前からあったということで、主に貝を使ったものでした。自分を美しく飾る、あるいはまつりごとに装飾をするということがこんなに古くからあったということは、人間の本質はあまり変わっていないのではないかと思いました。
そして、私が驚き感動したのがその素材です。ビーズになり得るものは小さなガラスとプラスティックだと思い込んでいた頭の固い私。 そんな私の目に飛び込んできたのは、種や花などの美しい植物。広い意味ではハワイでよく見られるレイもビーズアクセサリーなのです。自分が子どもの頃や子供が小さい時に数珠玉でネックレスを作ってあげたことを思い出しました。
動物の歯や羽なども装飾に使われています。次に石が使われるようになります。現在の半貴石ですね。そして金属、ガラスも使われます。使われている素材を見るとその当時の人々の暮らしぶりが想像できます。貝や卵の殻はおそらく食料品の廃棄物だったろうし、金属はその加工が容易にできる技術を持っていたのでしょう。
ビーズ装飾は装飾品としての役割だけではなく、社会を、もしくは階級を作ったのかもしれません。
鑑賞日:2019年6月15日 |
会 場:ギャラリー 宇 |
画家の嵯峨英二さんとその教え子(?)たちによるグループ展。
それぞれ個性が違い、面白い。楽しんで描いている絵や、自己に向けて描かれているように感じた作品などがありました。
絵ではなく、木でできた人形(宇宙人?)のようなオブジェも可愛らしく素敵でした。
鑑賞日:2019年6月25日 |
会 場:東京都美術館 |
『ムンク展』ほど大掛かりではありませんが、本展も広く告知されていました。同時期に国立新美術館で開催されてた『ウィーン・モダン展』にもクリムトの作品が出品されていたので相互でPRしていたのかもしれません。『ウィーン・モダン展』は鑑賞していませんが、フライヤーを持っていて、『エミリエ・フレーゲの肖像』が前面に紹介されています。私は『ウィーン世紀末』で見ています。
ということで、大変な人出でした。
琳派に影響されたというクリムトの作品は金箔や銀箔を使っていて華やかですが、必ずしもハッピーなわけではないようです。うなだれる老婆や美しい服をまとっていても表情のない女性など、負のエネルギーに取り憑かれているような人物もいました。
気になったことは、作品自体は大きなものなのに、美しい部分だけを切り取って展覧会グッズとして商品化していたこと。それってクリムトはOKなのかな? と思いました。(ま、それを言ったら、作品の中に文字や会期日程を入れ込んでしまう展覧会フライヤーもオリジナルに加工を施したものですが)
作品数は多かったのですが、かなりの人出と、あちこちで沸き起こる大きな声での会話で、あまり集中して見られませんでした。もっとゆっくりじっくり見たかったなぁ。
ちなみに1989年にセゾン美術館で見た『ウィーン世紀末』では、クリムトの絵を見て感動しています。
本展のフライヤーは3種類持っていますが、3種ともメインになっているのは『ユディト1』です。(ユディトは旧約聖書に出てくる美女。討伐に差し向けられた将軍ホロフェルネスを油断させて首を落とし、街を救います。なので生首を持っていますが、フライヤーはユディトの恍惚とした顔のみです)
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東京都美術館2階のカフェへ行くと、クリムト展とのコラボメニューがありました。
ウィーンのお菓子『ブラバンターシュニッテン カシスシャーベットを添えて』。平に焼いたシュー生地にカスタードとブルーベリージャムを挟んだデザートでした。平らに焼いたシュー生地を初めて見ました。なんというか、不思議な味、不思議な感覚でした。
鑑賞日:2019年9月19日 |
会 場:パナソニック汐留美術館 |
300年もの伝統があり、美しく人気も高いドイツの磁器製造メーカー、マイセン。その動物を集めた展覧会ということでしたが、それ以外の食器やシャンデリアなども多数あり、マイセンの優雅さや豪華さを見せる展覧会でした。
当時まだ西洋にはなかった陶器。マイセンは中国の磁器に魅せられた君主の命令により、監禁された錬金術士が試行錯誤の末に技術を習得し誕生します。磁器の動物園を作るという命令にも答え、たくさんの動物も作られていきました。
細部まで精巧に作られた動物たち。磁器なので本物と質感は全く違いますが、生き生きとしています。製作者の観察眼の鋭さが冷たい磁器に躍動感を与えています。素晴らしいです。
でも、私が目を奪われたのはやはりスノーボール。過剰な装飾でありながら重さを感じないのは調和がとれているから。個々の装飾が美しく、さらに全体像としてのデザインも完璧。素晴らしい芸術品です。会場は一部を除き撮影OKでしたが、気が付けば動物の写真は一枚もなくスノーボールばかり撮っていました。
鑑賞日:2019年9月21日 |
会 場:東京国立近代美術館 |
昨年亡くなった希代のアニメーション演出家、高畑勲さんが関わった仕事を見せる展覧会。静かでお優しい中にも強く、時には頑固なまでにも真っ直ぐにアニメーションを作っていたことがよくわかる展覧会でした。会場内は年配の方が多く、お子さんはほとんどいませんでした。
記憶にないアニメから『かぐや姫の物語』まで、製作された順に作品を追っていました。絵コンテを見るとキャラクターの心理や時間の経過などがよくわかり、見たことのない作品でも動く映像が見えてくるようでした。
たくさんの作品がありますが、私が一番好きな作品は『アルプスの少女ハイジ』。リアルタイムで見ていた子供の頃から変わらず大好きです。高畑氏をはじめ宮崎駿さん、小田部洋一さんは制作前にスイスへ視察に行っていて、その時の様子が写真で紹介されていました。写真に写されたスイスの美しい風景がそのままアニメになっています。
『アルプスの少女ハイジ』の魅力は天真爛漫な主人公とアルプスの大自然とそこに住む動物たちが、堂々と存在するからに他なりません。現代に生きる私たちの心を洗うかのようにその存在は大きく、爽快です。原作があるとはいえストーリーも素晴らしく、放送当時スタッフたちは誇らしかったのではないでしょうか。大げさに言ったら革命的なアニメーションだったのではないかと思います。(私は映画版『アルプスの少女ハイジ』ではなくTVシリーズの『アルプスの少女ハイジ』DVDを全巻持っています。子供が生まれた時に、この作品は絶対見せようと思い購入しました)
「アルプスの少女ハイジ」は自然と都会のコントラストが絶品だと再確認しました。街並みの美しさや生活感は『母をたずねて三千里』も素晴らしいのですが、自然と動物の描写がとにかく素晴らしい。また、オープニングでハイジがブランコに乗るシーン、ハイジの頭の上にとまる鳥たちの動きが本当に素晴らしい。オープニングのワンシーンだけでも素晴らしい。宮崎駿さん、小田部羊一さんとのタッグが生んだ傑作です。
私が大好きな作品『アルプスの少女ハイジ』の次は『パンダコパンダ』。ハイジとは打って変わって、動物を擬人化したファンタジーです。
『じゃりん子チエ』が高畑さんの演出だったのは本展を見て知りました。
戦後日本のアニメーションの揺籃期とも言える時代に高畑氏とそのお仲間の宮崎駿さん、小田部洋一さん、大塚康生さん等々、哲学と情熱を持った方々が同じ時間を生きていた事が奇跡であり、素晴らしい作品が残され、そして後輩も育ちました。それはある意味日本の財産で、その環境の中に育った私達は幸せだったと思います。
鑑賞日:2019年10月8日 |
会 場:練馬区立石神井公園 ふるさと文化館2階企画展示室 |
美術館ではなく、区の施設の一室を展示用に公開した展覧会でした。なので展示スペースは狭く作品数も少なかったのですが、その内容はかなり濃く、大変面白い展覧会でした。巡回展でもなく、短い期間に練馬区の小さな会場だけで終わってしまうのが勿体無い。みなさん鑑賞できたでしょうか?
江戸の昔、長生きを推奨する学者、貝原益軒は養生しながら長生きすることを書にしたためます。それ以前、庶民が自らの体についてどれだけの知識と、また死生観を持っていたのかは私にはわかりません。切腹で潔く死を選ぶことが美しいとされる時代もあったでしょう。そんな時代に貝原を始めとする学者や医者の啓蒙で庶民にも健康と養生の概念が浸透していったようです。庶民の生きることに貪欲な様子が見えてきます。戦がない平和だった時代背景も無関係だったとは思えません。
それから時が流れ、杉田玄白が『解体新書』を和訳します。これをきっかけに東洋医学一辺倒だった医者たちが西洋医学と出会い、広がっていきます。
本展では杉田がオランダ語の解体書『ターヘル・アナトミア』を手に、時には罪人を腑分け(人体解剖)することによって和訳していく姿をしっかりと紹介していました。そこに長い時間と情熱があったのだと知ることができます。
また、華岡青洲による乳がん手術の方法も図で示されており、そんな昔から認知されていた症状で、しかも現在と同じように摘出をする手術が施されていたのかと非常に驚きました。
庶民に健康維持の認識が広がると街に薬屋さんが増えていきます。療養所も増えていったと思いますが、どれだけの人がその恩恵を受けられたでしょう。医療を施すことのできない地方の人や貧しい家庭にも健康維持を心がけてもらうために、健康維持の広報は大事だったと思います。注意喚起の絵や薬の番付などが残されています。
現在は医療も発達し、江戸時代に恐れられていた流行病も注射1本で治ってしまったり、癌でさえも早期発見ならば完治する時代になりました。貝原益軒が望んだ誰もが長生きできる時代になりました。貝原益軒はどう思っているでしょうか。喜んでいるかな?
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平成30年正月、NHKドラマ「風雲児たち」(原作 みなもと太郎、脚本 三谷幸喜)はオランダ語の『ターヘル・アナトミア』を和訳し『解体新書』として出版するまでを描いた作品でした。主な和訳者は前野良沢であったにもかかわらず、本人の意向で著者として名前が記されていません。出版に際して完璧主義者の良沢は自身の和訳に納得がいかないという理由で名を連ねることを断固拒否します。主張も分かりますがなんとも勿体無い。『ラヂオの時間』の牛島だったら、本人が何と言おうと「これはあんたの作品だ」と言って名前を公表したでしょうね。
鑑賞日:2019年10月27日 |
会 場:足立区立伊興遺跡公園&展示館 |
足立区内の同地域から出土された古墳時代の土器や埴輪を展示した資料館。鑑賞当日は子供向けのワークショップがあり、子供達が粘土で埴輪のストラップを作っていたり、火起こし体験をしていたり、とっても賑やかでした。
公園の敷地内に展示館と復元された竪穴式住居がありました。展示館は大変小さく狭く、失礼ながら展示にもあまり工夫が見られず、ただ並べられているだけでした。そんな中で興味を引いた展示物が子持ち勾玉でした。勾玉から勾玉が生まれる様子を表現したものです。『勾玉が生まれる』という意味がある以上、これは装飾品ではなく、敬われる存在だったはず。もうこの時代には神への祭祀があったわけで、意味を持って造られたということです。
その他、生活用品や埴輪も出土されたらしく、展示されていました。竪穴式住居は中に入ることはできませんでした。(中では蝋人形のご家族が食事の支度をしていました!)
展示館は喫茶もなく、物販もなく、寂しい限り。それでも無料で配布している伊興遺跡の解説資料はよくできていました。
資料によると区内には古墳もあるとのこと。それも公園からほど近い場所ということで、帰り道に寄ってきました。
白旗塚古墳(画像右)は小さな古墳でした。平安時代に源義家が白旗を立てた伝説があるそうです。(だから古墳の上に木を植えたのか?)
鑑賞日:2019年11月9日 |
会 場:B&C HALL |
無料で完全予約制の本展。ワークショップはできませんでしたが、鑑賞できること自体がラッキーだと思い、娘と行ってきました。
シャネルのアパルトマンをイメージした会場は、白、ベージュ、黒、赤、金の5つのエリアに分かれ、それぞれに美しいドレス、香水、ジュエリーが展示されていました。豪華で美しいドレスたち、でも、これ、シャネル自身のデザインかな? そういえばカール・ラガーフェルド亡き後のデザイナーは誰だっけ?
『マドモワゼル プリヴェ』とはシャネルが自身のスタジオに掲げた名称。本展は《ココ・シャネル》の意思を受け継いだ《シャネル社》の展覧会であり、現在のデザイナー、ヴィルジニー・ヴィアールを紹介するためのプロジェクトだったのだと思います。
スマホにアプリをダウンロードすることでイヤホンガイドのように作品の解説が聞けました。これは新しい試みですね。(ガラケーの人はアウトですが)入場時にイヤホンガイドを配布していた『デヴィッド・ボウイ展』とは違う形ですが、鑑賞者全員に全てを伝えたいという思いは同じです。また、退場時に本展の図録にあたる小冊子とポーチを渡されました。無料でここまでしてくれるなんて、大盤振る舞いですね。
会場を移して、シャネルの映像を見ることもできました。
シャネル自身にスポットを当てた展覧会は1990年にBUNKAMURA ザ・ミュージアムで『マドモワゼル シャネル』を見ました。その展覧会の図録には本展でしきりに強調している鏡の間の階段部分の全景の写真が掲載されていました。
鑑賞日:2019年12月10日 |
会 場:東京都美術館 |
ロンドンにある美術館、コートールド美術館の印象派の作品を集めた展覧会。美術の教科書に載るような有名どころの作品が多くありました。(コートールド美術館はサミュエル・コートールドが収集した絵を中心に設立された美術館です)
印象派の絵は特に好きでも嫌いでもないのですが、今回ちょっと感動してしまいました。その作品はクロード・モネの『花瓶』。その花の可憐な美しさに驚いたのと同時に、見る側に写実的でないその花を美しいと感じられる感性と目を要求しているようにさえ感じてしまいました。私への挑戦状と言ったところでしょうか。もっともっと印象派の絵を見ていきたいと思いました。
ドガのバレリーナの絵はよく見るけれど『舞台上の二人の踊り子』ではチュチュのふわっと広がった様子が印象に残り、バレエの本番の衣装なんだと思いました。マネの『草上の昼食』はもっと写実的な作品なのかと思っていたのですが荒いタッチだったのでびっくり。どうやら同名の作品がオルセー美術館にあるらしく、そちらは顔の表情がはっきりとわかるタッチのようです。構図が同じで作品名も同じ。作品を作り上げる上での練習の絵だったのでしょうか。マネの『フォリーベルジェールのバー』(フライヤーの絵)は中央に描かれた女性が虚ろな表情をしているものの、美しい作品。バーの賑やかな様子がよくわかります。
本展は注目して欲しい作品数点に、絵を大きく引き伸ばしたパネルを使って、非常にわかりやすい解説をしていました。鑑賞者はそのパネルで解説を読んだ(見た)後に実際の作品を鑑賞することになります。私は2016年国立新美術館の『ダリ展』からイヤホンガイドに疑問を持っていたので、鑑賞者全てに等しく情報を提供するこのシステムは素晴らしいと思いました。
鑑賞日:2019年12月16日 |
会 場:国立新美術館 |
かつてマリリン・モンローが、映画『紳士は金髪がお好き』で高らかに歌い上げた当時のカルティエではなく、1970年代以降にデザインされた作品が展示されていました。
エントランスは美しい置き時計が展示されていました。工夫を施された美しい時計ですが、時間を見るよりもその美しい形状に目がいってしまい、本来の《時計》の機能はおまけだと思うのは私だけでしょうか。ここは人が多かったのですが、鑑賞者のざわつき以上に鑑賞者を一点に集中させずに流れを作ろうとしているスタッフの大声が耳に障るエリアでもありました。
カルティエの宝飾は『ブルガリ』に比べると小さく、線が細いと思いました。線が細いということは、そのまま肌に吸い付くようにフィットするのでしょうね。放射状に広がるネックレスは顔を引き立てる効果もあるでしょうから、身に付ける人を美しく飾るでしょう。
最近の文房具や工具をモチーフにしたアクセサリーはエレガントとは言えずあまり好きではありません。トラやワニなどの動物のアクセサリーは大変美しかったです。