さかなのこ
勉強はできないけれど、魚については誰よりも詳しいミー坊(のん)。ナイーブなミー坊は、いじめ、思いの行き違い、淡い恋を乗り越えながらお魚博士を目指す。
| 鑑賞日:2022年10月 9日 |
| 映画館:TOHOシネマズ 上野 |
タレントで東京海洋大学名誉博士でもあるさかなクンの生い立ち。何処まで事実でどの部分が創作なのかわかりません。

ちょっと悲しい思いもした青年なのでしょうが、その純粋さゆえにサポートする人が絶えません。一番のサポーターが母親。ミー坊がお魚博士になっていく過程を踏めたのは彼女の愛です。
男の子の役をのんちゃんが演じます。映画を見るまでは疑問に思っていたのですが、ナイーブな表情がうまく表現されていました。さかなクンを演じられる人は性別を超えても彼女しかいなかったのでしょう。納得のキャスティングです。
さかなクン本人もギョギョおじさんとして登場します。ギョギョおじさんとミー坊との別れは切なく、悲しいです。
映画内にはさかなクンの絵が出てきます。さかなクンの絵は生命力に溢れ素晴らしく、さかなクン自身が映画に深く関わっています。
作品を通して、子供の個性や教育を考えさせられ、心の揺れや心の持ち方の強さなど見せてもらいました。コメディタッチですが深い映画です。
ザ・タイガース 世界はボクらを待っている
銀河から宇宙船が地球に不時着する。王女シルビィ(久美かおり)はタイガースのコンサート会場に現れる。シルビィはジュリー(沢田研二)に恋をする。
| 鑑賞日:2025年 6月22日 |
| 映画館:神保町シアター |

1968年公開。グループサウンズ内でも大変な人気を誇ったザ・タイガースの初めての映画。ヒット曲がたくさん聞けます。
*ザ・タイガース
岸部おさみ サリー
森本太郎 タロー
瞳みのる ピー
加橋かつみ トッポ
沢田研二 ジュリー
注)加橋かつみ脱退後に岸部おさみの弟 岸部シローが加入。 岸部おさみは現在の岸部一徳。

デビューまもない頃の映像。みんな二十歳くらいでしょうか、若くて可愛い! そして、細い!
話の構成が終始エキセントリック。タイガースのメンバーの演技もあったものではありません。でもこれは、タイガースの姿を見に来た人のためのもの。アイドル映画の先駆けです。
宇宙人やUFOなどが登場し「あらあら」と思いますが、人気絶頂の頃のメンバーの恋愛絡みの話となると、生活感のある女の子より現実離れした宇宙人の方が都合が良かったのでしょうね。
この作品の興味深いところはリアルな部分が垣間見られること。下宿が烏山、四谷、また次の場所へとファンに見つかるたびに転居していたこと。移動中もファンから車で追いかけられていること。熱狂的なファンに常に囲まれていたこと。などなど。また、新宿ACBの映像があったこと。武道館も本物だったので新宿ACBもセットではないと思います。また、元大家でデザイナーの女性はキャンティの川添梶子、タンタンがモデルではないかと想像しています。
ニヒルなトッポは表情が乏しいですが、歌もダンスもお芝居も他のメンバーは皆楽しそう! 笑顔が素敵です。ボーカルで一番年下のジュリーに花を持たせていますが、他のメンバー、特にトッポの人気も大変なものだったはず。トッポの脱退がなければ、タイガースはもう少し息の長いバンドだったかもしれません。
驚くのがレコーディング風景の映像で、すぎやまこういちさんと橋本淳さんがいること。ちゃんとセリフもあります。
タイガースのデビューにあたって、すぎやま氏の存在は欠かせないものがあります。でもメンバーはどう思っていたのでしょう? バンド名もファニーズから鶴の一声でタイガースにされちゃったし、ローリングストーンズやビートルズのカバーバンドだったのにアイドル路線で歌謡曲を歌わされるし…。メンバーの意向がどれだけ汲まれてたのでしょうか?
タイガースのマネージャー役のなべおさみさん、お若い!『虹をわたって』でも見ましたが、当時のコメディには欠かせない人だったでしょう。コメディに欠かせない人にはもう一人、小松政夫さんも出演されていました。カッコ良かったのは宇宙人役の天本英世さん。どんな役でもこなします。
作中でわかるように明治の板チョコを差し出していたのはちょっと笑えました。(『黒部の太陽』でもわかるようにサントリーのウィスキーが写ってましたね)

作中終盤でジュリーが「映画を見ている人も一緒に!」と観客に呼びかけるシーンがあります。『シーサイド・バウンド』でのコール&レスポンス「ゴー バウンド!」と叫び、声をパワーに変えて、宇宙船で連れ去られたジュリーを取り戻すというもの。観客を巻き込むという手法は昔からあったのですね。
ジュリーに促されたとて「ゴーバウンド!」と言えるはずもなく。そしたら、なんと! 今週6月25日に応援上映があるそうです! すでにチケット完売で当日券もありませんが、チケットをお持ちの方は派手に応援してジュリーを地球に取り戻してくださいね。
6月25日はジュリーの誕生日。今年で77歳。喜寿になります。
ザ・タイガース 華やかなる招待
高校生の5人は授業をサボりバンドの練習をしていた。5人は髪を切れと言う親たちから逃げ、誤って貨物列車に乗ってしまう。やがて東京に着くが、お金も楽器も無く途方に暮れる。5人はひょんなことから久美子(久美かおり)の家に転がり込むことに。ジュリーを気に入った久美子は音楽事務所の社長にデモテープを渡し、5人を売り込む。
| 鑑賞日:2025年11月16日 |
| 映画館:神保町シアター |
今年6月の『ザ・タイガース 世界はボクらを待っている』の上映に引き続き、本作も神保町シアターで一週間限定にて上映されています。7日のうちの3日は応援上映です。

前作のファンタジーからちょっとリアリティある話になってます。東京でバンドとして成功したい夢を持った5人が紆余曲折の上、華々しくデビューするまでの話です。本人たちのスター性、音楽性、そして支援者が絡みます。
『シーシーシー』から始まる本作。みんな可愛い! 前作と同じくアイドル映画ですが5人とも前作のような棒読みではありません。同じ1968年公開作品ですが、半年で器用にも多少の演技が出来るようになりました。目覚ましい進歩!
5人は本当に可愛らしい。ジュリーの可愛さは突出していますが、ピーが可愛い! 小柄なためか、喜びや楽しさを全身で表現します。ピーが担任の先生に「教師になんかなりたくないから 云々…」と言っていましたよ。


出演者が前回よりも役者が多いように思いました。担任の先生は西村晃さん、音楽事務所の社長は牟田悌三さん、支配人に大泉滉さん、タローの母に塩沢ときさん、ジュリーの家の使用人に野村昭子さん。周りを固めてきたなって感じです。前回に引き続き小松政夫さんも出演されていましたが、注目すべきは内田裕也さん。ほんの数秒しか出ていませんが、タイガースの演奏を聴いて「いい音だ」と言っていました。
タイガースファンに応える神保町シアターさん。素晴らしい。このまま『ハーイ!ロンドン』の上映も期待しちゃいます。
ザ・マジックアワー
港町、守加護を仕切るマフィアのボス 手塩幸之助(西田敏行)。その情婦 高千穂マリ(深津絵里)に手を出した備後(妻夫木聡)。逢瀬がバレ、備後は絶体絶命のピンチに陥る。命を助けてもらう代わりに伝説の殺し屋デラ富樫を連れてくると苦し紛れに約束しその場を逃れるが、デラ冨樫と面識のない備後は途方にくれる。苦肉の策で売れない役者 村田大樹(佐藤浩市)をデラに仕立て、ボスの前に連れて行く。村田は映画の撮影と聞かされ初めての主演作品に意気揚々だが、マネージャー(小日向文世)は行き当たりばったりの演出に不信感を募らせる。そんな中、本物のデラ富樫の耳に偽物の情報が入る。
| 鑑賞日:2008年 夏頃 |
| 映画館: ? |
三谷幸喜監督の映画第4作目。封切り前にはTVでも繰り返し宣伝がなされ、とても楽しみに観に行きました。売れない役者を映画の撮影と偽り、事件に巻き込む。この思いきりのいい発想が素晴らしいです。
マジックアワーとは映画用語で、夕暮れのほんの一瞬の美しい空のことだそうです。その一瞬の輝きが村田の演技だったのならちょっとかわいそうな気もしますが、最高の瞬間と言われればそうだったのかもしれません。村田は”売れない役者”ではありますが、映画撮影の現場ではたくさんのスタッフに愛されています。それは役者にとって大切な要素の一つです。また、売れなくても役者道は貫いているようで、三谷幸喜監督の次の映画『素敵な金縛り』に役者の姿でほんの一瞬出演していました。役者を諦めていません!
この映画で一番印象に残ったのは小日向文世さん演じる村田のマネージャー。逸早く本質に近づこうとするもマネージャー業に追われ核心に触れられません。その存在が映画を面白くしています。ビリー・ワイルダー監督作品で脇役として出演するジャック・レモンのようです。
映画『グレートレース』のドロシー・プロバインのように、舞台上の三日月に腰掛けて歌う深津絵里さんがキュートですね。
また、本作品には『THE 有頂天ホテル』のベルボーイ憲二(香取慎吾)が夜の守加護で路上ライブを行っています。手塩商会の地下室には『THE 有頂天ホテル』で登場する爆笑した鹿のイラストが描かれた段ボールが積み上がっていました。ヒッチコックが自身の作品に登場するのと同じで、発見するのが楽しいです。
侍タイムスリッパー
現代にタイムスリップしてしまった幕末の会津藩士 高坂新左衛門(山口馬木也)は、時代劇の切られ役として生きていく決意をする。
| 鑑賞日:2025年 2月16日 |
| 映画館:TOHOシネマズ 日本橋 |
よく言われることですが幕末の武士や戦争で異国と戦った日本兵が現在の日本を見てどう思うのか。そして、現代に生きる私たちは、命をかけて日本の舵取りをしようとした人たちを、どう思うのか。

本作は幕末の会津藩士が現代にタイムスリップしてしまう話ですがコメディ一辺倒ではありません。軽やかな中にも武士の悲哀が隠れていました。
高坂は幕末からタイムスリップし、激変している現代日本で生きる道を見つけます。戸惑いながらも変化を受け入れていく高坂。幕末の混乱の中を生きる武士には必須の心得なのかもしれません。
そんな高坂の心を支えたのは彼の素性を知る由もない優子(沙倉ゆうの)と、理解者たち。高坂を記憶喪失と捉えていることもあり、暖かく接しています。
会津藩の行末を知った時の自らの身の振り方に悩む姿も痛々しい。この無念は現代人にはなかなか理解できないでしょうが、唯一理解しうるのは長州藩士 風見恭一郎(冨家ノリマサ)だけでしょう。
高坂が世話になっている寺で初めてショートケーキを食べて泣くシーンには感慨深いものがありました。恐らく、白米のおにぎりよりも豊かな日本を感じられた食べ物だったでしょう。映画『エクレール・お菓子放浪記』では貧しい孤児が洋菓子に魅せられていました。お菓子は豊かさの象徴です。
高坂が現代にタイムスリップをした時は江戸幕府が倒れて140年でした。2018年から2019年にかけての”明治150年キャンペーン”を楽しんだ私は一瞬「?」と思ました。が。作中で十数年という時間の流れを演出していたのかもしれません。(風見恭一郎ともタイムラグがあったし)なんとも心憎い。実にクール!
本作のラストがまた素晴らしい! ビリー・ワイルダーの『お熱いのがお好き』、三谷幸喜の『ラヂオの時間』に匹敵する素晴らしさです。
本作は監督 安田純一さんの自主制作映画で、わずか1館の映画館からスタートし、大ヒットになったものです。(普段は米農家を営んでおり、作中の白米のおにぎりは監督の作ったお米を自ら炊き上げて握ったとか。ちょっとカッコいいですね)
幸福の黄色いハンカチ
失恋の傷を癒すために有り金をはたいて車を買い、北海道へ気ままな旅に出る花田欽矢(武田鉄矢)。小川朱美(桃井かおり)をナンパするが、成り行きで島勇作(高倉健)も同乗することに。出所したばかりの勇作は、夕張に住む妻(倍賞千恵子)にまだ自分を必要としてくれるのなら物干竿の先に黄色いハンカチを結んでほしいと手紙を書くが、帰る勇気もなく迷っていた。事情を知った欽矢と朱美は勇作を励ましながら車を夕張へと走らせる。
| 鑑賞日:2014年12月 9日 |
| 映画館:TOHOシネマズ六本木 |
写し出される町並みや音楽に昭和の匂いが感じられますが、古臭くない。愛がテーマの映画です。
高倉健のかっこよさと、回想の倍賞千恵子のかわいらしさが際立ちます。結末がわかっているのに見入ってしまうのは山田洋次の力か、高倉健の表情か。再会に抱擁しないところがこの映画のセンスのいいところで、倍賞千恵子の気持ちも言葉もすべてを黄色いハンカチの枚数が代弁しています。単純なストーリーですが素晴らしい作品です。
下町の太陽
高度経済成長期の東京。マチコ(倍賞千恵子)は上昇志向の高い恋人とデートを重ねる。輝くように可愛らしいマチコに鉄工所で働く不良(勝呂誉)も心を寄せていた。
結婚した友人は誰もが夢見る団地に住み幸せの絶頂かと思いきや、その姿に寂しさを感じ取るマチコ。やがてマチコは出世競争を勝ち抜いた恋人からプロポーズを受ける。
| 鑑賞日:2025年12月 2日 |
| 映画館:神保町シアター |
見たかった本作。神保町シアターの《山田洋次と倍賞千恵子特集》で願いが叶いました。
本作は山田洋次監督第2作目で庶民讃歌の作品です。公開は1963年。作品内の風景に高度経済成長期の東京が映し出されています。(映画ではありませんが田沼武能さんの写真にも戦後の東京が見られます)

曳舟の石鹸工場で真面目に働き、母を亡くした家庭内で母の役割を担い、気の置けない友人と遊びも楽しむ、青春を謳歌するマチコ。ご近所付き合いも広く、町内全体が家族のようです。
出世街道まっしぐらの恋人との結婚に将来の幸せを見出せなかったマチコはプロポーズを断ります。ライバルを蹴落とし自分が抜きん出る恋人に違和感を覚えたのでしょう。きっとマチコは鉄工所で汗水垂らして働く不良(勝呂誉さんの役。役名忘れました)と一緒になるのだと思います。
裕福に暮らしたいと思う人、生活していけるお金さえあればいいと思う人。マチコは後者でしたが、どちらの考えも間違いではありません。結婚前に価値観の違いに気付いてよかったです。
ロケ地は曳舟の駅や荒川の土手など。曳舟には当時カネボウの工場があったので、カネボウでも撮影があったかもしれませんね。

初々しい倍賞千恵子さんが本当に可愛い! 絶世の美女ではないのですが(失礼!)キラキラしています。稀有な個性の女優だと思います。勝呂誉さんもお若いです。
私は倍賞さんの声も好きです。とても暖かい声です。声優として参加された手塚治虫さんのアニメ作品『ユニコ』の西風の精が素敵だったこと、『ユニコ魔法の島へ』の西風の精は違う方が演じられて不満だったことも覚えています。
神保町シアターの《山田洋次と倍賞千恵子特集》は同じく山田洋次監督・倍賞千恵子&木村拓哉主演の『TOKYOタクシー』公開記念で企画されたようです。
シアター内には上映予定のない『TOKYOタクシー』のポスターが貼られていました。齢を重ねても可愛らしい倍賞さん。木村拓哉さんに寄り添っています。 …。ん〜ん。なんと言いますか…。
高倉健さんの傍に寄り添っていた倍賞さんが木村拓哉さんの隣…。
木村さんとのツーショットは結構大きな衝撃で、昭和生まれのワタクシ、大いなる時間の流れを感じました。
七人の侍
戦国時代。毎年米の収穫後に野武士に襲われる小さな村の村人たちは野武士から村を守るために浪人に村に来てもらうように頼む。勘兵衛(志村喬)は一度は断りながらも村に行くことを承諾。そして、6人の侍と1人のならず者、菊千代(三船敏郎)が村へ赴く。
| 鑑賞日:2025年10月19日 |
| 映画館:TOHOシネマズ日本橋 |
黒澤明監督作品。3時間半の長い映画ですが、最後までスリリングで目が離せない作品でした。

見ず知らずの百姓のために地位も名誉も得られない戦いに命を賭ける七人の男たちのなんと勇ましいこと!
浪人たちをまとめる勘兵衛が素晴らしい! 志村喬がかっこいい! ならず者の菊千代や、まだまだ経験の浅い勝四郎を仲間として受け入れるその度量の大きさや、戦の中でも緊張を緩和させようと村人を笑わせる気遣いなど、どれをとっても素晴らしい。また、作戦に同意しない川向こうの村人に喝を入れたり、武器も人材も不利と思われる野武士との戦いの作戦が的確。浪人にしておくのはもったいない。一国一城の主になる素質がある人です。
本作のメインビジュアルは三船敏郎ですが、主役は三船敏郎ではなく志村喬です。
三船敏郎さん演じる菊千代は武士ではありません。協調性はありませんが百姓の痛みがわかる男で、村人のために戦います。三船敏郎さんは主役ではありませんが本作に華をそえる男。モノクロ映画で三船さんの目がキラキラと光る姿が強烈に印象に残ります。その存在感はものすごいです。
代償の大きな戦いでしたが村に平和が訪れました。「勝者は村人」最後まで勘兵衛がかっこいいです。
ステキな金縛り
新前弁護士の宝生(深津絵里)はある殺人事件を担当する。殺人が行われたと推定される時間、被告人は金縛りにあっていた。被告人には”金縛り”というアリバイがあるがそれを証明できるのは落ち武者の幽霊、更級六兵衛(西田敏行)だけだった。宝生は無罪を勝ち取るために幽霊の更級六兵衛を裁判の証人として出廷させる。
| 鑑賞日:2011年12月15日 |
| 映画館: ? |
三谷幸喜監督の映画第5作目。アリバイを証明するために幽霊を法廷に出廷させるというアイデアが三谷幸喜らしいです。また、西田敏行さんが落武者の幽霊を好演しています。
作品には幽霊の他にも、あの世から来た男など特殊な人達が登場します。現実離れした話の中で事件解決をしていきます。宝生の父の幽霊が娘と心を通わせるというこれまた現実離れをしたおまけもついてきます。三谷流の人情話ですね。
本作には『THE 有頂天ホテル』のコールガール(篠原涼子)が登場します。
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『死刑台のエレベーター』を見て本作を思い出しました。
砂の器
蒲田の操作場で遺体が発見される。たった一つの手掛かり「カメダ」から今西(丹波哲郎)は犯人を追う。
| 鑑賞日:2015年 3月17日 |
| 映画館:新天地シネマズ 錦糸町 |
松本清張の原作であることと加藤剛が出演しているという以外はなんの予備知識もなく鑑賞しました。

本作は殺人事件の背景にある、社会から排除された孤独な父子が描かれています。
ハンセン病の知識不足から引き離された父子。自分の病状や息子の行方もわからない父はさぞかし辛かったでしょう。生きる望みは息子との再会だけ。一方息子は父の病気をどれだけ理解できていたのかわかりませんが、多くの人々に蔑まれた結果、情の薄い男になります。
親子は共に会いたかったはずなのにお互い避けてしまったのは、父は社会的な成功をおさめた息子への思いやり、息子は将来の自分の姿と誤解し父の姿が怖かったのかもしれません。殺意がいつどのように生まれたのかはちょっとわかりませんでしたが、消したい過去を呼び戻す男を受け入れられなかったのでしょうね。
当時、実際にハンセン病の知識不足から大変な差別を受けた方が多かったと思います。本作が40年前に製作されたことを考えると、社会的にも大きな影響を及ぼした作品だったでしょう。
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最近ではグッドルッキンガイのことをイケメンと呼んでいます。テレビをつければ毎日のように注目のイケメン、ニューフェイスのイケメンが取り上げられています。でも私は、若い頃の加藤剛さんよりもイケメンな日本人はいないと密かに思っています。NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』で初めて加藤剛さんを見た子供の頃からずっと。
スローなブギにしてくれ
知らない男(山崎努)の車に乗る高校生のさち乃(浅野温子)。車から放り出されたところをゴロー(古尾谷雅人)に助けられ、ゴローのアパートに猫と共に転がり込む。
| 鑑賞日:2025年 6月22日 |
| 映画館:神保町シアター |

30年くらい前に一度ビデオで鑑賞しただけで、映画館での鑑賞は初めて。浅野温子さんの可愛いらしさは覚えているのですが、内容は綺麗さっぱり忘れていました。でも南佳孝さんの主題歌はよく覚えています。

男の憂さ晴らしを見せられているようで内容はあまりよくわからなかったのですがとにかく浅野温子が可愛いっ! それに尽きます。
ムスタングの男(山崎努)は家庭があり愛人もいるのに、街で拾ったさち乃にも手を出します。妻とは夫婦仲が冷め(作中で離婚成立)愛人はもう一人の男(原田芳雄)との奇妙な三角関係。高校生の子猫のように力無く可愛いさち乃をおもちゃのように扱います。罪深い男です。
ゴローは若さのせいか(?)思慮深さに欠け、時にさち乃を傷つけながらも不器用に愛します。ちょっと頼りなさがあります。
家庭に居場所がないさち乃。危なっかしくて見てられない。さち乃は猫の化身でした。

一番カッコ良かったのはバーのマスターの室田日出男さん。腕っぷしが強いだけでなく、人をよく見ています。
バーの常連に岸部一徳さんがいます。そしてボトルキープの酒瓶に大きく「ジュリー」と書かれているものがあり、目がそこに行ってしまいました。他にもいろんな名前があったのかな?
お若い伊丹十三さんや奥田瑛二さん、そしてなぜか角川春樹さん…。これ、角川映画なのか!
『陽暉楼』では無邪気な捻くれ者を演じた浅野温子さん。TVドラマでもそうですが、彼女は子猫のような愛くるしさと生意気さを併せ持つ女をとても魅力的に演じます。こういった表現をする女優を私は他に知りません。唯一無二の女優です。
戦場のメリークリスマス
MERRY CHRISTMAS MR. LAWRENCE
1942年ジャワ。ヨノイ大尉(坂本龍一)が所長を務める日本軍捕虜収容所にジャック・セリアズ少佐(デヴィッド・ボウイ)が捕虜としてやってくる。ヨノイは初めてセリアズを見た時から心惹かれる何かを感じていた。
| 鑑賞日:1983年 7月12日 |
| 映画館:新宿京王1 |
大島渚が監督し、坂本龍一、ビートたけし、デヴィッド・ボウイが出演した話題作。


撮影参加前後のビートたけしさんがあちこちのテレビやラジオで撮影秘話を披露していたことも手伝い、大変注目されていました。日本国民が公開を心待ちにしていたと言ったら言い過ぎかもしれませんが、かなり大きなニュースでした。
また坂本龍一さんが作ったテーマ曲も大ヒットしました。(テーマ曲はインストロメンタルですが、デヴィッド・シルビアンがボーカルを吹き込んだバージョンもあったと思います)
【当時の鑑賞日記】
とてもよかった。
戦争ってとても怖いよ!人間の個人的な感情は入れちゃいけないんだ。感情で動く人間は殺さなくっちゃいけないんだ。それならどうして戦争が起こるんだろう…。
たけしがはじめに言った「メリークリスマス Mr.ローレンス」というのは何だったんだろう。最後の「メリークリスマス Mr.ローレンス」は寂しすぎる。たけしで始まってたけしで終わった。音楽もよかった。
戦争体験のない私には鑑賞当時も今も、死と隣り合わせの戦時中の人間の心理を理解することは難しいです。命の尊さは全世界共通であるはずなのに、生き急ぐような日本兵と捕虜の間には”生”に対する執着が逆転しているように見えます。しかしどんな極限状態に陥っても人間が愛情を抱くのは共通のようです。
二・二六事件に参加できずに死にはぐったと思い続けるヨノイ大尉は自らの死に場所を探していたのかもしれません。そんな彼の前に現れたセリアズ少佐は心を乱す悪魔であり、同時にささやかな希望だったはず。『男が男に惚れる』という精神的なものでなく、セクシャルなイメージで惹かれて行くヨノイ大尉。本作は戦争映画ではなく純粋な愛がテーマの作品だと思います。
デヴィッド・ボウイが亡くなった時、テレビでビートたけしさんが衝撃の秘話を語っていました。セリアズ少佐がヨノイ大尉と頬を合わせるシーンで映像がコマ送りのようになっているのは、カメラの故障で意図的なものではなかったとのこと。取り直しをしたものの、コマ送りの方がよかったのでそちらを採用したそうです。本作で一番注目すべきシーンは、たけしさん言うところの『奇跡』が生み出したようです。