南極物語
昭和32年オングル島 昭和基地。翌年の南極の本観測成功のため越冬生活をしていた。
昭和33年2月、南極昭和基地では第一次越冬隊員と樺太犬が第二次越冬隊員たちとの交代を目前にしていた。
天候の影響もあり今日中に大陸を引き上げるよう命が下りる。潮田(高倉健)、越智(渡瀬恒彦)たち越冬隊員は飛行船昭和号で観測船宗谷に乗り込む。観測船宗谷内で潮田と越智は第二次越冬隊員の樺太犬担当の隊員たちと引き継ぎをする。
大陸は悪天候の上、厚い氷にも阻まれていた。宗谷は何度も着陸を試みるも氷は厚く、第二次越冬隊員は南極上陸を断念する。樺太犬は置き去りにせざるをえなかった。帰国後、犬を置き去りにしてしまった隊員達は非難の矢面に立たされる。潮田と越智は南極に心を残し辛い日々を送る。
一年後、南極へ向う第三次越冬隊員に自ら志願した潮田と越智は南極で置き去りにしたタロとジロを確認する。
鑑賞日:1983年 8月12日 |
映画館:池袋スカラ座 |
実話に基づいた作品。
フジテレビ制作で大ヒットしました。しばらくの間、邦画の観客動員数が1位だったと思います。
【当時の鑑賞日記】
立ち見だったので、内容をあまり落ち着いて見てられなかった。でもSTORYの展開がわりと早かったのでよかったけど。
んー、そんな感動はなかったね。かわいそうだなとは思ったけど。
南極の過酷な環境に犬を置き去りにして帰国した男たち。苦渋の決断ですが辛かったことでしょう。命なのだから。特にホワイトアウトで身動きが取れなくなったところを犬たちに救われた潮田と越智にとっては居た堪れなかったと思います。それだけに、タロとジロとの再会は感動的でした。高倉健と渡瀬恒彦が「タロ」「ジロ」と呼ぶ声はテレビの映像で繰り返し見ていたこともあり、音楽とセットで頭に焼き付いています。
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2025年、丸の内TOEIで展示されていた『南極物語』のチラシと高倉健さんの帽子。
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2020年に参加した『サルベージキッチン』で南極料理人の渡貫淳子さんから南極の話をお聞きました。
虹をわたって
労働者たちが住むダルマ船に転がり込むマリ(天地真理)。父(有島一郎)の再婚相手(日色ともゑ)を嫌い、家出したのだった。裕福な家に生まれ育ったマリは、家出という”冒険”で労働者たちや王子様、昭夫(沢田研二)と交流する。
鑑賞日:2024年 4月27日 |
映画館:ラピュタ阿佐ヶ谷 |
前田陽一監督、天地真理主演のコメディ。往年のヒット曲がたくさん聴けて懐かしい! 観客は真理ちゃんファンのおじさま方ばかりでした。
純真なお嬢様がギャンブルに目がないその日暮らしの男たちと船上で生活します。
あり得ないその危うさが『白雪姫』に重ねることで成立してしまう。
王子様が登場するも王子様とハッピーエンドにならなかったのはアイドル映画だから。マリちゃんは誰のものでもないのだ。(沢田研二も誰のものでもない?)
天使のようなキラキラした天地真理。本当にかわいい! ちょっぴりチャラ男の昭夫、沢田研二が文字通り王子様でかっこいい! でも私が一番強く印象に残ったのは、京浜会幹部役の財津一郎でした。ヤクザな男たちとお調子者(なべおさみ)の駆け引きのコミカルなシーン。隣で鑑賞していたおじさまは声を出して笑っていたけれど、私はちょっと怖かった。財津一郎のコミカルな演技から見え隠れするヤクザな顔にゾッとした。恐るべし財津一郎。ただのコメディアンにあらず。
天地真理のヒット曲が懐かしい。そして、沢田研二の弾き語り『君をのせて』を聞き
「あれ? これ制作年数いつだっけ?」
と思い確認したら1972年でした。PYGの頃でしょうか。萩原健一もカメオ出演していたし。(岸部シローも出てたけど)ジュリーの弾き語り、かっこよかった!
人間の証明
ファッションデザイナーの八杉恭子(岡本茉莉子)は国会議員の夫(三船敏郎)と一人息子の恭平(岩城滉一)と裕福な暮らしをしていた。
恭子のファッションショーが行われた日、黒人の青年ジョニー・ヘイワード(ジョー山中)が何者かに刺し殺される。ジョニーは西条八十の詩集をもっていた。同じ日、恭平は車を運転中に女性をはね、恋人とともに遺体を海に捨てていた。
棟居刑事(松田優作)はヘイワードが恭子の息子で、母親に会いに来たのではないかといち早く気付く。棟居はヘイワードの父(ロバート・アール・ジョーンズ)に会うためにニューヨークへ飛ぶ。現地でヘイワードの情報を調べていたケン・シュフタン刑事(ジョージ・ケネディ)と合流し、ヘイワードの父に会う。棟居はヘイワードの父に西条八十の詩を朗読し、狼狽えた姿を見てジョニーが恭子の子供だと確信する。ニューヨークには逃亡した恭平もいた。逃げる恭平をシュフタン刑事は射殺する。
帰国後、恭子に恭平の死を伝えると、恭子はジョニーを手にかけたことを認める。
鑑賞日:2025年 5月19日 |
映画館:丸の内TOEI |
公開当時、本作を見たかったものの見られず、小説を読みました。衝撃の犯人。そしてテレビ放映で本作を見て、そのラストシーンはテーマソングと共に忘れることはありませんでした。子供の頃に衝撃を受けた本作、45年以上経って映画館で鑑賞です。
恭子は戦後の日本で懸命に生きていた。知り合った軍人と子供を持ち家庭を作るも、男と子供はアメリカへ帰国してしまう。絶望の中、恭子は後の夫となる男と出会う。…。戦後のアメリカの統治下の日本にはこんな話があちこちにあったようです。
GIベイビーとして生まれたジョニーはハーレムで育ちます。ママに会うために父が工面してくれた金を握り日本へやってきます。しかし実の母に拒絶された悲しみに生きる希望を無くしたことでしょう。母が自分の腹に刺したナイフを自らの手でさらに奥深く差し込みます。デザイナーとして社会的な地位を確立した恭子に過去の人間が現れるのは不都合だったのでしょうか。ジョニーが不憫でなりません。
松田優作が個性的な刑事を演じています。個性的といえば聞こえはいいですが、強烈に無愛想です。『太陽にほえろ!』のジーパンのようなちょっとした愛嬌も皆無でした。
岩城滉一が逃げて松田優作が追うシーンに「若いなぁ〜」「昭和だな〜」などと思ってしまいました。
鶴田浩二さんは操上和美さんが撮影したグラビアのように渋い印象でしたが、本作ではあまり重くない印象でした。
三船敏郎さんは舌打ちまでも説得力があります。
伴淳三郎さん、久しぶりに見ました!
本作は松田優作さんの印象が強いですが、一番好演していたのは岡本茉莉子さん。辛い過去を持ち、夫の裏切りに耐え、犯罪を犯した息子を庇う。昭和の”耐える女”。しかし、犯罪を犯してしまう女。絶妙に見せる疲れた顔に、女優を見た思いです。
本作の音楽は大野雄二さんが担当されていたよう。映画内のBGMに子供の頃に見ていたテレビアニメ『ルパン三世』がチラつきました。(ルパンも大野雄二さんが音楽を担当)それで本作に昭和を感じるのかもしれません。