鑑賞日:1988年 4月 2日 |
会 場:池袋東武 |
THE ROLLING STONESのギタリスト、ロニー・ウッドの絵画展。写真から絵をおこす似顔絵にも似た単純な作品だけど、彼の素直な性格がそのまま現れ、とても魅力のあるものでした。
【当時の鑑賞日記】
ただただロン・ウッドが描いたから見に行くという動機だったんだけど、こいつはすごい奴だ。(略)
アンディ・ウォーホルが言ってた。「私の師は一番大切なものを描きなさいと教えてくれた。だから私はスープの缶詰を描いた。」自分が興味のあるものを描けばいいってことだよね。
当時の私は名のある画家やグラフィックデザイナーの作品ばかりを見ていたので、商業ベースではないこういった力の抜けた、子どもの描いた絵のような純粋な作品に触れて感動したのを覚えています。
鑑賞日:1988年 4月 9日 |
会 場:西武美術館 |
ハリウッド、映画業界が大きくなっていく軌跡を追った展覧会。
【当時の鑑賞日記】
なかなかびっくりする内容の展示物があったよ。
おもしろかったのはマレーネ・デートリッヒ出演映画のポスター。デートリッヒが絵に描かれてるんだけど、その格好がミロのビーナスなの。ビーナスは腕がないんだけど、このデートリッヒは黒の手袋で腕を隠しちゃってるわけ。こいつはおもしろかったにゃ。
とにかく古き良きハリウッドは本当に大好きです。そうそう、私のジャックもテレビでちらっと写ったの♥
この私のジャック
とはジャック・レモンのことです。
鑑賞日:1988年 5月 6日 |
会 場:東京国立近代美術館 |
【当時の鑑賞日記】
Rちゃんの招待で行ってきました。
(略)この人、かなりたくさんの裸婦を描いてるんだけどさ、その多くの作品で、人間の皮膚の色として緑を使ってたんだ。な、な、なんなんだー! と思ったね。暗闇の中でいすに座っている裸婦があったんだけど、そいつなんて黄緑と朱色だけなんだ。これはさすがに上手い! と思ったね。とにかくしつこいくらい裸婦がいっぱいあったんだけど、いやらしくなかったね。
この人はなんだかルノアールに絵を教わったそうな。「絵を描きたい」っていう純粋な気持ちが大切だって思ってるんだけど、でもそれ以前に誰かに絵の描き方を教えてもらわなくっちゃだめだね。(略)
絵を見るだけではなく、描いてみたいと思っていた頃でした。
その後、2016年に『ルノワール展』を鑑賞します。梅原龍三郎なんて普段すっかりと忘れているのに、ルノワール展で28年ぶりに思い出します。美術の教育を受けたわけではない私でも、ちゃんと繋がっていました。
鑑賞日:1988年 5月 7日 |
会 場:小田急グランドギャラリー |
Yさんにチケットをいただき、見に行きました。
【当時の鑑賞日記】
こいつは久々の感動だったぞーーーー!!
日本はたいしておもしろい国でもないけど、日本の文化は西洋に劣らず、すごいものがあるな。うん。日本も捨てたもんじゃないね。日本の歴史をもう一度見直してみようかなって気持ちにさせるくらいね。日本の文化はおもしろいぜ!
展覧会鑑賞時にはほぼ図録を購入していますが、本展のものは残っておらず、詳しい出品物は今となってはわかりません。でも、これだけ興奮した日記を書いている所を見ると、衝撃の展覧会だったのでしょうね。
日本はたいしておもしろい国でもない
なんてよく言ったものです。
鑑賞日:1988年 5月29日 |
会 場:東京都庭園美術館 |
本展は日本で初めてのルネ・ラリック展ということで、お孫さんにあたるマリー=クロード・ラリックさんが挨拶文を寄せています。
【当時の鑑賞日記】
これまたRちゃんの招待で行ってきました。
よかったね。人は多かったけど作品は良かった。この人のものは自然をモチーフにしたものばかりだった。インコとか薔薇とか人間とかね。そんで思ったんだけどね、やはり自然のものが一番美しい形なんじゃないかって。その自然の形の中でも最も美しいのは人間の女じゃないかなって。
それから、この美術館なんだけど、昔の誰かさんの家なんだよね。美術館にしてあるけど純粋な家なわけ。これがすっっっっごくかっこいいんだな。屋根が高くてさ、ずっしりしてて。こんな家に私も住みたい。
自然の形の中で人間の女性が一番美しい
というのは、美術作品の見すぎかもしれませんね。
庭園美術館は1933年にアンリ・ラパンと宮内省内匠寮が設計した旧朝香宮邸です。大変美しく、威厳を放ちながら優しく入館者を迎えます。朝香宮允子妃殿下(あさかのみやのぶこ妃殿下)が鳩彦殿下(やすひこ殿下)のフランス留学中にアール・デコを知ったとのことで、朝香宮邸はアール・デコの美しいお屋敷になったそう。玄関のガラス扉はラリックのデザインによるもの。この扉にマリー=クロード・ラリックさんは驚かれたようです。そんなご縁もあってラリック展が開催れたのでしょうね。旧朝香宮邸、庭園美術館は重要文化財です。
鑑賞日:1988年 7月 9日 |
会 場:東京国立近代美術館 |
【当時の鑑賞日記】
いや〜〜〜、人人人人人人人人人……。『ミレー展』の時と同じくらいいた。PM3:00頃に入館したんだけど、あ〜んまり人が多いもんでPM4:30になるまで4階でジュース飲んでたんだ。そんでジュース飲んでる時に隣に座っていた二人組の男の人の会話が印象に残ったんだ。
男A「まったく、人を見に来たんじゃないっつーの! まぁ子連れがいないだけでもいいけどさ」
男B「マグリットが見たくて来る人も中にはいるだろうけどさ、ファッション誌なんかに『こーゆーのを見るのがオシャレ』とか載ってて、それだけで来るやつもいるもんなー」
男A「モンドリアンの時はさすがに人いなかったもんな」
男B「日本人の絵画を見るっていう水準が低いんだよな」
すごいよな、この人たち。絵画を観る水準が低い
なんてなかなか言えないよ。私はどうして絵を観に行くかと言うと、一番はやっぱり自分を発見するため。二番目は感動がほしいから。三番目は勉強のため。こんな私は美術館にとっていい客なのかな?(略)
そんでもってマグリットはなかなかおもしろかったな。全体的にマグリットには笑いがあるね。(略)それから思ったことは、もう空って自然じゃないかもしれないなってこと。鳥は自然だけど、空は自然じゃないかもしれないってこと。
なんだか熱く語ってますね。自分を発見するために絵画を見る
なんて小洒落たこと書いてます。
鑑賞日:1988年 7月15日 |
会 場:伊勢丹美術館 |
キュビズムを知ったのはこのブラック展からです。一目見て大好きになりました。
【当時の鑑賞日記】
すごかったなぁー。ブラックって。
『北欧の美術展』でムンクを観た時にも思ったけど、有名な人はやっぱりそれだけの絵を描くね。偶然に有名になったなんて人はいないよ。『母の肖像』を観た時にはほんとうに驚いたね。色の使い方で蛍光色に見えちゃうから不思議だよね。『果物皿』なんかを観てもものすごいなって思っちゃう。作品全体はすごく、物静かなものばっかりなんだけど、みんなずっしりきてるんだよね。やっぱ基礎がなってないといいものは出来ないね。
物の本質を多角的に捉えたキュビズムはシュールレアリズムよりもわかりやすく、親しみやすいです。平面のように見えて奥行きもしっかり見え、見るほどに美しい。また、ブラックの色使いは薄暗いのに飛び出てくるような主張もあり、惹きつけられます。
鑑賞日:1988年 8月17日 |
鑑賞日:1988年 8月21日 |
会 場:原美術館 |
【当時の鑑賞日記】
アンディ・ウォーホルってやっぱすごい奴だね。
『靴とスニーカー』って作品も4枚並ぶと靴が何かの虫に見えたりする。ただの椅子も4枚並ぶと何かの植物に見えるし、砂浜の足跡も4枚並ぶと雨つぶに見える。笑っちゃったのが、橋を撮った写真なんだけど、4枚並ぶと1つの橋の真ん中が段になっててつづいてるみたいに見えるんだ。「楽しんでやってるなーーー」って思っちゃった。(略)
それから、この原美術館っていうのは存在自体が美術なんだ。建物がすごいの。庭園美術館もよかったけど、ここもかっこいい。
当時、2度観に行ったようです。面白かったのでしょう。連続したモチーフは視点が変わり新しい発見もあるので今でも好きです。
鑑賞日:1988年10月29日 |
会 場:国立西洋美術館 |
【当時の鑑賞日記】
すごい人だった。美術館の中であんな大声でくっちゃべんないでほしい。あったく、何しに来てるんでしょうね。
なかなか面白かったよ。みんな平面的で。そんな平面の美術を一歩リードしてポスターを作ったロートレックってすごいなぁ。進んでんなぁ。(略)
なんだか解りづらい鑑賞日記です。おそらく、写実的な絵の中に浮世絵のような平面の絵が混在していることに面白みを感じたんでしょうね。
鑑賞日:1988年10月29日 |
会 場:東京都美術館 |
【当時の鑑賞日記】
『ジャポニズム展』
から比べたら、人の少ないこと少ないこと。
(略)よかったねー。すごく。人間の絵を描くならまず、ねんどなんかで人間がつくれないとだめだななんて思ってしまった。
粘土で人を作れなくても絵は描けると思うけど、絵も彫刻も対象をよく熟知してないといけないってことを言いたかったのでしょう。
『ジャポニズム展』と同じ日に鑑賞しています。
鑑賞日:1988年11月26日 |
会 場:東京都美術館 |
前年に『 若林薫 切り絵展』を見て、切り絵に興味を持ち、見に行ったのだと思います。
本展は公募展だったと思います。
【当時の鑑賞日記】
まいったね。やられたよ。黒い紙以外の絵はもちろん、切り絵の上からエアスプレーがしてあったり、厚紙を何枚も合わせて立体的に見せたり、切り絵の上に貼り絵があったりね。(略)
私の切り絵のイメージは、絵本『モチモチの木』の滝平二郎さんでした。黒く力強い線で表現される顔。目も鼻も切り離されることなく繋がった絵こそが切り絵の技法で表現なのだと思っていました。
本展では私の持つ切り絵のイメージとは違う作品が多かったのでしょう。黒い紙を切り込んでいくといった切り絵の定番からはずれた独創的な作品が多く感動したようです。