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『宇宙とか天体とか空とか』
西新井にある複合施設ギャラクシティ。ここで小型惑星探査機はやぶさ2 帰還1周年記念のイベントがありました。子供向けのはやぶさ2ペーパークラフトやVR体験などもありましたが、メインは文化ホールでの講演。はやぶさに携わった専門家の話が聞けました。講演は夕方5時スタートでしたが、講演に先駆けて2階にあるプラネタリウムで「はやぶさ」の映画の上映があったので、2本見てきました。盛りだくさんの「はやぶさ」企画、時系列にレポートします。
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2階のプラネタリウムで上坂浩光監督の映画『HAYABUSA Back to the Earth』を見ました。
上映前にスペシャルゲスト上坂監督の挨拶がありました。監督によると、本作製造中はまだ「はやぶさ」は帰還しておらず、なんとか戻ってきてほしいという願いを込め、JAXAの全面協力のもと製作したそうです。
私が小型惑星探査機はやぶさを知ったのはテレビでした。故障や不時着のせいでが燃料が漏れるなどの度重なるトラブルで瀕死の「はやぶさ」が小惑星イトカワの探査から無事に地球に帰って来れるか!? と大変話題になっていました。その後「はやぶさ」から送られた最後の地球の画像が大変美しく、多くの国民の心を打ちました。
本作はCG画像を使ったドキュメンタリーです。映画内では「はやぶさ」を生き物のように「君」や「彼」と呼んでいました。「彼」の辿った軌跡を見ていくと、やはり生き物のように健気で愛おしい。前述のように上坂監督の帰還してほしいという願いが本作に宿っているのです。
火星と木星の間にある小惑星イトカワ。その軌道に乗るために地球の重力を利用して勢いをつけて乗り移るスイングバイを行うのだそう。軌道に乗ることで燃料の削減になるのです! 小惑星の軌道と地球の軌道を考え、最小のエネルギーで最大の効果を発揮できるようにするため、逆算して打ち上げの日が決まるそう。う〜ん、宇宙ってやっぱり物理と化学だわ〜。(注:軌道の位置関係によって小惑星の場所は変わる)
小惑星イトカワの岩を砕くための前段階としてターゲットマーカーをイトカワの平坦な場所に落とします。そのターゲットマーカーには88万人の名前が刻まれていたのだそう。
そして・・・
遠い記憶が蘇る。
そう言えば、1998年に「あなたの名前を火星に」キャンペーンに応募したな、私・・。20年以上前のことですっかり忘れてた!
その後「はやぶさ」の感動的な軌跡を辿る物語は映画になりました。それも3本も濫立し、人気の高さが伺えます。でも私はNHKの科学番組のような、ドキュメンタリーのようなものが見たかったので、本作の存在を知り、鑑賞できてラッキーでした。
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『HAYABUSA Back to the Earth』観賞後に、同じく上坂浩光監督作品『HAYABUSA2〜REBORN 帰還バージョン』を鑑賞しました。
ここでも上坂浩光監督の挨拶がありました。(恐らく本作の観客はほとんどの方が『HAYABUSA Back to the Earth』を観た方で、「おっ! 監督また出てきた!」といった空気がありました)ここでちょっと面白い裏話がありました。
地球と惑星の軌道の関係で何年何月何日に打ち上げると、(ベストの)日程が計算で決まってくる。「はやぶさ2」は2014年か2020年にしか発射できなかったが、「はやぶさ2プロジェクト」は行政の事業仕分けで中止になりかけていたそう。しかし、感動的な初代「はやぶさ」の姿を見た大勢の人たちが嘆願書を政府へ提出、そのおかげで「はやぶさ2プロジェクト」が起動したということです。やはり初代である「はやぶさ」の功績は非常に大きかったということです。
「はやぶさ2」のミッションは地球と火星の間にある小惑星リュウグウのサンプルを持ち帰ること。(太陽から遠いリュウグウは水が残っているという。)小惑星リュウグウにあるとされる水と有機物のサンプルを採取することで生命の起源を探るという壮大なプロジェクト。(注:軌道の位置関係によって小惑星の場所は変わる)
二代目である「はやぶさ2」は初代のトラブルを教訓にしているのか、優等生。リュウグウのサンプルを地球に投下し予定にはなかった別の惑星に旅立って行きました。
初代に比べたらドラマはなかったのかもしれませんが、こちらはサンプルの解析が非常に気になります。
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プラネタリウムで「はやぶさ」の映画を観た後は本日のメインイベント、『3人の専門家が語る はやぶさのすべて』。講師の方はJAXA宇宙科学研究所の吉川真さん、同じくJAXA宇宙科学研究所の津田雄一さん、東京大学宇宙惑星科学機構の橘省吾さん。限られた時間の中、パワーポイントを使いながら、それぞれ違った視点ではやぶさを語っていました。
★吉川真さんは「はやぶさ2プロジェクト」のミッションマネージャー。総合的な視点から「はやぶさ2」を語ってくださいました。
「はやぶさ2」は優等生の探査機ですが、ここに辿り着くまでに数々の太陽系探査機の挑戦がありました。火星の探査機の「のぞみ」は火星の軌道に入れず。金星の探査機「あかつき」、月の探査機「ひてん」「かぐや」水星の探査機「ベピコロンボ」、失敗と成功を繰り返します。そして「はやぶさ」。
「はやぶさ」と「はやぶさ2」は小惑星のサンプルを採取し、地球に戻ってきました。戻ってきた探査機は世界初だそう。ここは大いに自慢できるところでしょう。
今はまだ言えないこともあるでしょうが、今後も探査機の計画があることでしょう。楽しみですね。
★津田雄一さんは「はやぶさ2プロジェクト」のプロジェクトマネージャー。探査機の設計などの話をしてくださいました。
探査機の起動設定、どのコースに乗せて帰ってくるかということが専門だそう。イオンエンジンやスイングバイでより効率的に小惑星に近づくコースを計算するということです。
惑星についてからは「はやぶさ2」から送られてくる画像を見ながら平らな場所を確認したそう。しかし地球からの指示では時差が出てしまうので、探査機自身が判断するそう。探査機ってロボットだということですよね。『WALL・E/ウォーリー』みたいな感じですね。それでみんな「はやぶさ」を生き物のように親しみを込めて可愛がっているのですね。
「はやぶさ」「はやぶさ2」の判断は全てプログラミングによるもの。バグ禁止の8000行にわたるプログラムをはやぶさにアップロードしたのだそう。プログラミングに3〜4ヶ月かかったとか。バグ禁止って当たり前だけどすごいなぁ。
「はやぶさ2」は優等生。地球に帰還した時点で燃料が半分残っていて、機体も損傷がなかったことから追加のミッションが! 2031年に小惑星1998KY26到着を目指すという。「地球に帰ってきた時、はやぶさ2はとっても元気だったんです」と言っていて、生き物のように愛おしいという様子が見て取れました。
★橘省吾さんは化学の世界の人で、サンプルの解析を専門にされている方です。
「みなさん、『西遊記』は三蔵法師や孫悟空たちが天竺へありがたいお経を取りに行く話です。『宇宙戦艦ヤマト』は放射能が蔓延した地球を救うため放射能除去装置をもらいに行く話です。道中のトラブル回避にスポットが当たって面白い話になっていますが、大事なのはお経や放射能除去装置です。はやぶさでは小惑星のサンプルで、私はその分析をしています。」そうですよね。もちろんワタクシそっちの方も気になりますよ!
橘さんはこのコロナ禍を「はやぶさ2」が落としたサンプルを取りにオーストラリアへ行った話をしてくださいました。コロナ禍なので予定していた人数をオーストラリアへ送り込めなかったことや、サンプルの扱いが大変だったことや、帰国後も隔離生活をしてから研究に入ったなど、実に楽しそうに語ってくださいました。
できたままの状態であるとみられる小惑星を調べることで宇宙の成り立ちがわかるかもしれないという。地球の水や有機物の存在は、宇宙から隕石として地球に運び込まれたものかもしれない。海がどうやってできたのかもわかっていない。そんな謎が解けるかもしれないのです!
現在分析中のサンプルに水や有機物があると見られている。世界中から300人の科学者が集まり、6つのグループに分かれて分析しているという。分析結果の報告はまだ先になるらしい。
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はやぶさ一色の1日でした。専門家である吉川真さん、津田雄一さん、橘省吾さんは子供のように楽しそうにお話されていました。御三方だけではなく、司会進行を務めた寺薗淳也さん、プラネタリウムの監督上坂浩光さん、みなさん本当にはやぶさを愛し、仕事を楽しんでいるんだと思いました。
雨上がりの空に現れる美しい虹。滅多にないことなので、虹が見られるって、とてもラッキーです!
雨が上がった後すぐに陽の光が差し込むことにより見える光の現象。空気中に水分が多くないと見られません。同じような現象として噴水の中にも虹を見ることができますね。
雨上がりの空の無数の水滴がプリズムとなり、太陽光を分解し、可視光が綺麗に七色に見えます。太陽光が水滴の中を通り屈折、反射して人間の目に届き、この入射光と反射光の違い(屈折率)で七色に見えます。同じ屈折率の光は同じ色。従って、太陽を背にしないと虹は見られません。