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     邦 画 ・ ら行
  《 STORY 》
平安時代。羅生門で雨宿りをする僧侶(千秋実)と男(志村喬)。そこへ下人(上田吉二郎)が駆け込んでくる。僧侶と男が納得出来ないという事件について下人に語り始める。
薮の中で男(森雅之)の死体が発見される。ほどなくして盗賊(三船敏郎)が拘束され、殺しの理由を証言する。次に男の妻(京マチ子)が証言するが盗賊のそれとは違っていた。巫女を通して死んだ男も証言するが盗賊と妻のそれと違っていた。三人とも嘘をついていると話す男は、自分が目撃した様子を語るが…。
鑑賞日:2015年 1月18日
映画館:TOHOシネマズ 六本木

芥川龍之介の『藪の中』を題材にしているので内容は広く知られていると思いますが、本作の映像の表現、特に役者の表情は大変素晴らしく、人間の欲望や本質を写し出しています。

殺人が起こり、容疑者、被害者双方の証言を聞き出すも、すべて辻褄が合いません。死人でさえも自分の都合のいい事ばかりを並べ立て、第三者であるはずの目撃者も保身に走ります。一人の男が殺されたという事実以外は、何も明らかにならない。人間の本質はいつの世も、どの世界でも同じなのでしょう。時間を超えて人間の利己主義の醜さを私たちに訴えます。「良心ってなんだろう」と考えてしまいました。この矛盾に狼狽しきりの若き僧侶が哀れであり、目撃者が捨て子を引き取るラストが希望です。

京マチ子の可愛らしさにも目を奪われますが、剛力無双の男を演じる三船敏郎のオーラがすごいです。監督黒澤明が引き出したのでしょうか。ならず者でありながら、男の色気を強烈に放ち、藪の中を縦横無尽に走り回る。モノクロですがスクリーンから飛び出してきそうな躍動感。実際の撮影現場で三船の演技を目にした方は圧倒されたことでしょう。

半世紀以上も前に作られていながら今も尚見る者の心を惹きつける本作品、映画ファンなら見るべきです。

  《 STORY 》
専業主婦の鈴木みやこ(鈴木京香)は投稿した脚本が生放送のラジオドラマに採用され意気揚々とスタジオに入る。スタジオでは主役を演じる千本のっ子(戸田恵子)と相手役の浜村(細川俊之)がリハーサルをしていた。リハーサルを終え控え室に帰った千本のっ子は役名が気にいらないので変えて欲しいと言い出す。メアリージェーンと名前を変更したために、辻褄が合わないことが連鎖的に起こり、脚本が書き変えられていく。
鑑賞日:2016年 6月23日
映画館:キネマ旬報シアター

三谷幸喜の映画第一回監督作品で秀作。

一人のわがままでラジオドラマの現場が引っ掻き回されます。生放送という時間の制約の中で現場のスタッフが軌道修正をしていく姿が実に滑稽。ラジオドラマの可能性や、番組を作り上げることに情熱を注ぐスタッフ達の描写に、三谷幸喜さんの演劇世界の先輩方への敬意が見られます。その最たるものが効果音のスペシャリストだった守衛さんの登場。藤村俊二さん演じる守衛さんの台詞は三谷幸喜さん自身の声なのではないかと思います。

私が初めて三谷幸喜さんを知ったのは本作品でした。見終わって、この人は和製ビリー・ワイルダーだと思いました。それは映画最後の西村雅彦さん演じる牛島の台詞「水陸両用車だったことにしよう。陸専用とは言ってない」があまりにも見事だったから。これはワイルダー監督の『お熱いのがお好き』の最後の台詞「完璧な人間なんていない」に通じる抜群に破壊力のある台詞です!

エンドロールで布施明さんの歌が流れます。布施さんの伸びのある素晴らしい歌唱力が最後の最後に至っておかしさを増幅させます。