太陽を盗んだ男
理科の教師、城戸誠(沢田研二)は自室で原爆を作り上げる。自分は何をしたいのかと自らに問いかけながらも、国を脅迫する。
鑑賞日:2019年 1月 3日 |
映画館:キネマ旬報シアター |
1979年公開の映画。人生に生きがいを見つけられない男が、自室でとんでもないものを作り、自分の力を世に誇示します。動機がよくわかりませんが、仕事に忠実な山下警部(菅原文太)を交渉役に指定したところを見ると、自分探しの一環だったのかもしれません。究極の愉快犯かもしれません。
ナイター中継を試合終了まで流すようにとの要求があっさり通ると、次にローリングストーンズの来日公演を要求します。街中にストーンズ来日公演のポスターが貼られます。壮観です。
ストーンズのポスターはサムガールズの時のものが使われています。これ、ストーンズファンにはちょっと嬉しい演出です。実際にストーンズは1973年、チケットの販売までされながら公演中止になり日本のストーンズファンを落胆させたことはあまりにも有名。本作公開時はストーンズの来日公演は絶望的なことの一つでもあったのでしょう。
40年前の作品なのでツッコミどころ満載ですが(日本橋東急デパートなど)、テンポのいい展開と美しいジュリーが見られ面白いです。
沈黙
江戸幕府は禁教令を出し、キリスト教徒を迫害していた。布教のために来日していた宣教師フェレイラ(丹波哲郎)は消息が不明になっていた。フェレイラを師と慕うロドリゴ(ディヴィッド・ランプソン)とガルぺ(ダン・ケニー)は布教とフェレイラの消息を確認するため、キチジロー(マコ岩松)の導きで長崎にたどり着く。そこで日本のキリシタン迫害の酷さを目の当たりにする。
鑑賞日:2025年 5月23日 |
映画館:新文芸座 |
中学三年生の時に初めて読んだ遠藤周作さんの小説『沈黙』。当時、非常にショッキングで、何度も読み返しました。それから30年以上が経ち…。 2017年にスコセッシ監督が『沈黙』を映画化しましたが鑑賞できませんでした。いつか必ず見る! と思っていたら、1971年制作の邦画の本作を見るチャンスが巡ってきました。これはラッキー!
監督は篠田正浩さん。脚本には遠藤周作さんご本人と、キチジロー役のマコ岩松さんのお二方のお名前がありました。(制作は表現社とマコ・インターナショナル)
物語の発端は、日本の禁教令。キリスト教が爆発的に信者を集めたことに脅威を覚えた幕府の政策は、キリスト教を根絶することでした。
パードレを棄教させるために拷問をします。それは信者への拷問を見せる卑劣なもの。ロドリゴは耐えられず、また愛のために転びます。すでに転んでいるフェレイラの「神は何もなされなかった」という言葉が重いです。
この作品のもう一人の主役がキチジロー。おそらくユダをモデルにしたであろう男。自分の弱さのためにパードレを売りますが、その金を握りしめほくそ笑むような悪人でもないこの男を、神はどう思うのか。
本作はとても興味深いものでしたが、やはり私は小説の方がいい。遠藤周作の雨が広がる描写はとても美しいし、ロドリゴの心の声も小説の方が丁寧です。(映画の時間は限られているし、ま、しょうがないけど)
キチジロー役のマコ岩松さんが若いっ! 丹波哲郎さんのフェレイラは非常に卑屈な男でした。女郎の三田佳子さんははっきりものを言い、ちょっとかっこよかったです。
それにしても、本作のポスターはなぜこのシーンなのでしょうか? 篠田監督の奥方 岩下志麻さんは可愛かったけど、ポスター中央に持ってくるべきだったのかな? これじゃぁラブストーリーみたいに見えますよね。
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マコ岩松さん(本名:岩松信)は日本で生まれましたがアメリカで活躍されていました。父は画家で絵本作家の八島太郎さん(本名:岩松淳)です。八島さんの絵本は何冊も読んでいますが、中でも私は「あまがさ」が好きです。ああいった話を絵本にする感性が素敵だなって思います。
テルマエロマエ
古代ローマのテルマエ(浴場)の設計技師ルシウス(阿部寛)は浴場の在り方について悩んでいた。公衆浴場の浴槽に身を沈め考え事をしていると、排水溝から現代の日本にタイムスリップしてしまう。現代日本の風呂の技術を見てカルチャーショックを受けたルシウスは、現代日本で知り合った真実(上戸彩)の協力も得て、古代ローマに戻り、日本で見知った技術を取り入れた浴場を作る。ルシウスはローマ皇帝ハドリアヌス( 市村正親)に気に入られ、一躍人気のテルマエ技師になる。
鑑賞日:2012年 4月30日 |
映画館: ー |
古代ローマ人が現代の日本にタイムスリップし、日本のお風呂の技術を古代ローマで生かしていくコメディ映画。ナンセンスな話なのですが、とてもユーモラスでエンターテイメント性の高い作品でした。
主役の阿部寛を筆頭に古代ローマ人役の日本人俳優が外国人の役なのに大きな違和感がありません。キャティングのセンスの良さを感じます。
テルマエロマエⅡ
グラディエーターを癒す浴場作りを命じられたルシウス(阿部寛)は、また日本へとタイムスリップしてしまう。日本で再会した真実(上戸彩)と一緒にローマへ戻り、浴場の設計をする。そんな中、ローマ国内では権力争いで分裂の危機を迎えようとしていた。
鑑賞日:2014年 4月29日 |
映画館: ー |
古代ローマ人が現代の日本にタイムスリップする映画『テルマエロマエ』の続編。
古代ローマのシーンはCGではなく海外ロケのようで、映像がとても美しく、洋画を見ている感覚に陥ります。また、日本の温泉の風景は、切り取って絵はがきに出来そうなほどに幻想的な美しさでした。
誇り高い古代ローマ人を演じる阿部寛さんの顔芸(?)にますます拍車がかかります。その時代の文化の違いを見せつけられる屈辱を顔で表現します。ベタな表現ですが、この作品の数ある見せ場の1つでもあります。
ときめきに死す
新興宗教の要人暗殺の命を受けた工藤(沢田研二)は、世話係の大倉(杉浦直樹)と女(樋口可南子)と生活をする。決行の日に向けて工藤は肉体を鍛錬していく。
鑑賞日:2024年 7月27日 |
映画館:新文芸坐 |
物静かな男が思い詰めたように身体を鍛え上げていきます。大きな壺のような飴の容器から腕が抜けなくなるほどの太さに筋肉も増強されていきます。
工藤には海で居合わせた男(岸辺一徳)を殺してしまう常軌を逸した行動はあったものの私には殺し屋には見えなかったので、普通の男をテロリストに仕立て上げるような怖さを感じました。家族に贈り物を残したり、女性を抱く行為など、決行の日までに気持ちを整えていく工藤に、特攻隊に向かう青年のイメージが重なりました。非常に怖い。
標的を目の前にした工藤の顔は何かが削ぎ落とされたような美しさがありました。沢田研二がそう見せたのでしょう。恐ろしいことです。(「太陽を盗んだ男」のようなチャラさはありません)最後のシーンは彼自身の選択。ときめいたのは一体誰だったのか。フランス映画のような余韻が残ります。
大倉のストレスの捌け口として激しいベッドシーンがありました。昨年見た『マルサの女』での濃厚なシーンもちらつき、こういったシーンが突然挟み込まれるから邦画はあまり見なかったのだと子供の頃の自分を急に思い出しました。日本映画の一部にはエロ要素が興行的に必要だった時代もあったのでしょうね。(因みに本作にも美しい宮本信子さんが出演されています)
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上映後に音楽を担当された塩村宰さん、映画プロデューサー三沢和子さん(森田氏の奥様)、宇多丸さんのトークショーがありました。
冷たい印象の音楽が若干記憶に残りましたが、宇多丸さんのようにマニアックにシーンごとの音を覚えていなかったので、ほとんどわからない話ばかりでした。
でもその中でちょっとした情報を得ました。塩村宰さんと三沢和子さんは早稲田大学1年生の時、同じジャズサークルに在籍していたそう。2年に船山元紀さん、3年に吉田健さんがいたとか! 吉田健さんってそんな歳だったっけ? とびっくりしてしまいました。いつまでもエキゾティックスから抜けられない私。
三沢さんは「沢田研二さんって歌手だったのよ」とか「みんな『イカ天』って知らないかな?」とおっしゃっていました。そっか〜。若い子は知らないのか〜。私も歳をとったんだな〜と、しみじみ思ってしまいました。